ノスタルジックなイメージで語られることの多い蒸気機関車(SL)だが、巻頭の「征け 氷雪の峠へ!」を初めとする数々のルポは、「苦行」とさえ感じられる、乗務員の奮闘ぶりを余すことなく思い知らせてくれる。
かつて、東海道本線で特急列車「つばめ」の先頭に立ったC62が、重連で北海道・ニセコの峠越えに挑む迫力ある走行写真は、多くの媒体で紹介されてきた。しかし、その運転台で行われていた、火室からの熱気にさらされ、炭塵をかぶり、蒸気に包まれた中で、圧力やブレーキを調整する機関士や、石炭をくべる助士の「技」を、これほどまでに克明に描いた文章が、他に著されたことはないだろう。
幼い頃から鉄道を愛し、自ら「鉄道ジャーナル」誌を立ち上げ、鉄道員たちの努力を数多く紹介してきたという著者の、集大成といっていい。いずれも雑誌に掲載されたルポの再録だが、ベテラン鉄道写真家・荒川好夫氏や、自身による臨場感にあふれた写真の数々が、書籍としての再編集によってバランスよくちりばめられ、思い入れ深く格調高い文章に華を添えている。
ルポというくくりの域を超えた、「文学作品集」といっても過言ではない。