そこらへんにある時計の本とは奥行きの深さが違います。昨今の機械式時計ブームに乗った本は数多くありますが、その殆どは時計をファッション的に捉えており、構造解説があっても「ちょっと小難しいことも書きました」と言わんばかりのものです。その点、本書は自らも時計師であった本間氏が監修しているだけあって、構造解説も丁寧且つ的を得ています。私は本書で初めて機械式時計の基本的原理が理解でき、かくも複雑、精緻なものが13〜14世紀には存在していたこと知り人類の叡知に改めて驚きました。また、氏は単に時計の解説をするだけでなく、「世界時」と「原子時」の関係、或いは時と文化の関係など、「時」ということを誠実に説明してくれています。後半の代表的時計紹介も氏の深い造詣に基づく基準で選定されており、各々の時計の価値がどこにあるのか、とてもよく分かります。とにかく感動的な本です。大変満足しました。