著者は、元毎日新聞記者で、1972年に沖縄返還に伴う日米密約を暴露して逮捕され、結局は最高裁で有罪判決を受けた。この辺りは『沖縄密約−「情報犯罪」と日米同盟』(岩波新書)に詳しい。本書は、アメリカにおける過去の外交文書開示の流れの中で、2009年3月16日に新たに密約文書開示請求訴訟(原告は著者を含め25名)を起こしてから、2010年4月9日に東京地裁で全面勝訴するまでの物語である。優秀な弁護士たちとの息の合った訴訟プロセス、密約文書の当事者である吉野元外務省アメリカ局長の証人尋問場面など、ドラマのように感動的である。
杉原裁判長の訴訟指揮の結果、国に機密文書の開示を求める画期的な判決が下される。原告の完全勝利である。この過程で明らかになったのは、政権交代後も、長い自民党政権時代の無責任な事なかれ主義と対米従属から一歩も出ていない外務省の実態である。彼らには自己保身しか頭になく、国民の「知る権利」などは一顧の価値もないらしい。その証拠は、政権交代後にもかかわらず、国が控訴したことである。
本書で改めて明らかになったのは、膨大な「おもいやり予算」や普天間基地問題の根源が1969年〜1971年当時の沖縄返還交渉とその時に交わされた密約にあることである。その意味で本書は、決して過去の問題をほじくり返しているのでなく、今当面している米軍基地問題解決の糸口にもなりうるものである。
密約が40年間近くも政府により隠し続けられたことの最大の要因は、マスコミ(特に大新聞)の権力チェック力の弱さ(むしろ欠如)である。その意味で、マスコミは密約の共犯者ともいえるかも知れない。本書は、著者の生き方を通して、真のジャーナリストとは何か、についても教えてくれる。