富野・大河原・安彦という3巨頭が揃って製作し、バンダイも『シルエット・フォーミュラ』としてプ
ラモシリーズを打ち出すなど力が入っていた作品ですが、公開当時は同じくらいの時期にやっ
ていた『0083』の方が人気があったという印象でした。今回BD化ということで購入してみまし
たが、今改めて観るとかなり面白い。
冒頭の、クロスボーン・バンガード(CB)によるコロニー襲撃の場面は素晴らしい。視点がモビ
ルスーツ(MS)ではなく一般市民の目線になっており、CBはもちろん市街地で巨大な薬莢を
ばら撒きながら暴れる連邦のMSも、市民にとっては等しく恐怖の対象でしかないことが良く
分かります。混乱の中で死んでいく人々や恐怖で動けなくなる老女、満員の防空壕や空から
落ちてくるMSの残骸等の描写はロボアニメの戦闘というより『空襲』を思わせ、かなり怖い。
都市が空から爆撃される、というのは日本人にとって本能的な恐怖なのかも。
ここは作画も良く、このシーンのためだけでも観る価値はあります。
主人公のシーブックは富野作品には珍しく(?)、素直で正義感のある少年なので見ていて
気持ちがいい。お約束の『親子のすれ違い・愛憎』もありますがアムロやカミーユに比べると
それほど不快ではないです。
残念なのは後半部分の作画がかなり荒れ気味なこと。特に大ボスの巨大モビルアーマー・
ラフレシアが出てきた辺りからは相当苦しい(作画キズも結構目立つ)。せめて序盤並の絵
がキープできていれば、もっと高い評価を得られた作品かも知れません。また中盤の展開は
急な上に詰め込み過ぎて説明不足になっている部分もあり。フィルムの保存状態はシーン
ごとにまちまちだったようで、BD化により驚くほどクリアになった絵もあれば、かえって
アラが目立ってしまった場面もあって痛し痒しといったところ。
とはいえクライマックスのM.E.P.E攻撃のシーンは今見ても恰好良いし、キャラクター
も魅力的だ。ラストを含めたストーリーも悪くない。地味だけど深い正調ガンダム映画です。