本巻ではファーストガンダム屈指の名場面であるテキサスの攻防が描かれています。
ここにシャリア・ブルとの戦いを持ってきてるのですが、これがなかなか興味深いですね。
アニメでは落ち着いた壮年兵士として描かれ、富野小説でも重要キャラだったシャリア・ブル。
ここでは血気盛んな青年という設定ですが、どちらかと言うと「やられキャラ」的に描かれているのが印象的でした。
あっさりとガンダムにやられた直後、シャアがつぶやいたセリフに、シャリア・ブルに対する安彦氏の思いが凝縮されているような気がします。
また、シャアがガンダムとの死闘の最中に、自分自身のNTの可能性について語る部分があるのですが、ここは色んな意味で面白い。
アニメでは、ア・バオア・クーでのアムロとの戦いの中でそういうセリフがありましたが、本巻ほどはっきりと語っているのは、初めてではないでしょうか。
ここを読むと、シャアはカリスマ的な指導者であった父・ジオンという存在や、その父が創り出したNTという概念そのものに、心を囚われているように見えます。
だからこそ、「NTとして生まれ出る世の中」を考えるに至ったのでしょうし、最強のNTであるアムロを強烈に意識するのも当然かも知れません。
そんなジレンマやコンプレックスを抱えるシャアに対し、その後も一貫して、あくまでパイロットとして生きたアムロ。
本巻ではそんな2人の差も明確になりつつあり、改めてガンダムという物語の奥深さを感じます。
また、物語の後半、シャアがセイラに、父への想いや自身の世界観などを語るシーンがあるのですが、ここではアニメでは語られなかったシャアという人間の心の中を垣間見る事が出来て、読み応えのある名シーンに仕上がっています。