田中芳樹の「銀河英雄伝説」では、後世の歴史家という視点が度々登場し、複眼的な描写がなされ作品に独特の風格と深みを与えることに成功していた。架空の出来事にも関わらず、歴史上の謎やifといったものさえ考えさせるような内容を伴わなければ、そうした試みは成功しない。
さて本書は、さながらガンダムにおける出来事を後世の視点で捉えるということを試みた作品。
一年戦争最終盤であるア・バオア・クー攻防戦に実際に参加した両軍の兵士達に、戦後取材し、再現VTRと年月を経た兵士たちに対するインタビューからなるドキュメンタリー番組があったという設定での展開。
同攻防戦の戰局推移を辿りながら、それぞれの持場持場にいた兵士達が何を見て、何をしたのか・・・さながら読者はそのドキュメンタリー番組を見る視聴者の立場といえる。
結論から言うと冒頭の試みは見事に成功している。それぞれの兵士がアニメなどで有名なエピソード(ソーラレイ発射、ギレンの演説と暗殺、空母ドロス、ホワイトベース擱坐・・)に少しずつ絡みながら、現場現場の両軍の兵士達がどのような活動を行っていたのか、リアリティの高いストーリーが展開される。
ジオン軍の医療班兵士が見るホワイトベースとの白兵戦など最たるシーンだ。
(元兵士インタビュ): ・・・出入り口から用心して顔を出したんです。用心なんてその瞬間吹っ飛びました・・。
(ナレーションorテロップ): 彼が見たものは連邦軍の白い強襲揚陸艦だった。
といった調子。
さらには歴史の闇に消えた謎といったシーンあり、真実はどこに消えたんだ!と思ったりする。やや詰めが甘いところもあるが、全体の満足度は高い。ぜひ続刊を期待したい。