テレビアニメ第6話までをノベライズした内容ですが、なかなかどうして侮れない内容。ネット上のガノタの間では賛否両論の激しい『
機動戦士ガンダムAGE』ですが、本作はテレビアニメ本編のストーリーを踏襲しつつもガラリと雰囲気を変え、子供(に暴力的なアニメを見せたくない大人)への配慮を全力でぶっちぎりつつ、口うるさい大人のオタクを唸らせる内容にアレンジして描いています。戦闘シーンでは容赦無く民間人が焼かれ、生身で真空中に放り出され、子供の首はへし折られ、軍人は脳漿を撒き散らす。戦争で人が死ぬのは当然とは言え、やや悪趣味とも思える戦場の描写の中で、登場人物同士のドラマも描かれ、テレビアニメ本編以上に冷徹な復讐鬼として描かれるグルーデック艦長や、フリットとディケとエミリーの微妙な三角関係、戦いを愛しつつも信念を持って子供を戦いから遠ざけようとするウルフの真意が、内面にも踏み込まれており、感情移入して読める内容になっていると感じました。
テレビアニメ本編のコンセプトは「子供にも分かるように翻訳したガンダム」なのだそうですが、これはその逆翻訳版といった趣です。テレビアニメ版では子供には難しいからと省略されていた、兵器のスペックやコロニーの特殊な環境への描写も、SFらしさを醸し出している独自の見どころ。ジェノアスのビームスプレーガンが現代兵器と比較してどれくらいの威力であるとかいった言及や、轟音を撒き散らして唸るジラ&ゼノの120ミリ・マシンガン、コリオリ力(?)を計算しながら一撃必殺のヒートスコップを槍のように繰り出すデスペラードの勇姿など、本編ではまったくのヤラレメカだったMSがとても強そうに描写されているのもポイント。それでも歯が立たないUEのデタラメな強さと、それに一矢報いるガンダムの強さも引き立つというものです。
引っかかりを覚えることなく納得できる描写があって、登場人物の行動が合理的で、テレビアニメの内容を補完する内容。もっとも、お父さんが幼いお子さんに買い与える本としてはちょっと薦められないかも知れませんが、テレビアニメの描写に不満があった人や、「子供向けのガンダムなんて」と『AGE』を斜に構えて見ていたガノタの方には絶対おすすめ。実は『AGE』のファンだという方にも、ひと味違う『AGE』を楽しめるし布教用にもなるしで2度おすめ。著者の小太刀右京さんは、
『マクロスF』のノベライズなども担当した小説家さんとのことで、同ノベライズ版のファンだった人は今作も楽しめるのではないでしょうか。なお個人的には、AMBACへの言及があるのにはニヤリとさせられました。