イノベイドたちとの戦闘から2年後、各地ではまだ争いが残りつつも、
世界は恒久平和に向けて歩み出しました。
が、木星より金属異星体・エルスが地球に接近することになり、
人類たちは自らの存亡をかけた闘いに挑みます。
そして、本作品は刹那・F・セイエイの戦いの最終章でもあります。
以下は気づいたことです。
【イ】淡々と言葉を並べ、人物への肉薄を避けているかのようで、
どこか叙事詩を読んでいるかのようでした。
【ロ】「漂流」をキーワードに据えれば、己の戦いの意味を
探す刹那のみならず、生き延びる道を探すエルスも主人公になり得ます。
【ハ】刹那は自分とは異なる他の存在との相互理解を模索しますが、
これはヘーゲル哲学の相互承認を想起させます。
エルス・ELSは英語の形容詞・副詞“else”「その他の/他に」と同音です。
【二】主人公が武器・防具を捨ててはっとしました。
私は『天空のラピュタ』でのパズーを思い出し、
華々しい戦闘の描写は“ゲーム”にすぎない、
だから“ゲーム”から目を覚ませ、と暗示しているようでした。
【ホ】344頁や345頁などで刹那は「もがき」ます。
「生存競争」と和訳される“struggle for existence”が脳裏をよぎり、
この英単語を注意深く見れば「生存のために必死であがく・もがく」です。
本気で生きる刹那たち、そして理解し合うことで平和な社会が生まれる
という制作者たちの真っ直ぐな信念に感銘を受けました。
文学、哲学、比較文化の詳しい方が読めばまた別の解釈が生まれてくると思います。
内容の点で侮れないサブカルチャーだと思います。
最後に、エピローグの「……きみが正しかった……」
「……あなたも、間違ってはいなかった……」(365頁)
の刹那とマリナの二重唱は他者との分かり合いの素晴らしさ
とその力を美しく、かつ輝かしく歌い上げています。