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「もう、今までの遣り方ではこれからやっていけない」。誰も反論できないように
思えるこの認識をテコに、新たな装いで復活する「社会ダーウィニズム」や「優生
学」的発想、自己責任の建前で弱者へツケを廻す構造。新たな階級性への移行と
その再生産へ、大きな一歩を踏み出したかにみえる日本。そうした状況に、著者は
危機感を募らせる。
ここ数年、話題になるような「今の日本ここがヘンじゃないのか?」関係の書籍
は、結局、このテーマの周辺を巡っている気がする。賛成、反対の違いはあれど。
自分なりにこの大きなうねりへの処し方を考える意味でも、著者の主張への賛否と
は別に、是非、今、読まれる本だと思う。
個人的には、存在している、生きているだけで満たされない社会は、やはりどこか
異常だと思う。「より高く、より早く、より遠くへ」と、常に全員が叫び続ける社会、
人生が「何かとの見合い」とでしか測られない社会は、成熟とは全く異なる、ある
種の薄ら寒さを覚える。
「日本をリセット」すべく、傲慢な日本のエリート階級の子息を仮想空間で殺害せ
んとする設定の掲題アニメ。鑑賞後の後味の空しさには共通するものがある。
学者の書く専門書は理論や実証分析が中心で、実感の湧きにくいものが多いが、本書は(多少うんざりしてしまうほど)多くのキーパーソンが登場し、積極的な取材によって彼らの内面に潜むイデオロギーをうまく暴き出している。
本のテーマからして、読み手の主観によって賛否がわかれそうであるが、多くのレビュアーが絶賛しているというのは、そうした著者の意欲的な姿勢が評価されているのであろう。私もその姿勢に感銘を受けた。
しかし、ひとつ残念なのは、教育問題や経済問題などを同時に扱ったため、主張にこじつけやねじれが感じられることである。
本書では経済学者の中でも特にフリードマンや竹中平蔵氏など、いわゆる新自由主義者を中心にスポットをあてているが、「彼らの主張」=「経済学一般の主張」と錯覚してしまうような構成は危険である。
経済学は「カネ」や「自由」ばかりを追及する学問ではない。経済学は効率性に加えて「公平性」という観点からも分析を試みる社会科学であり、近年「教育経済学」などの領域において、ゆとり教育などの諸問題に対する分析が盛んに行われている。何も経済学は所得格差や階層固定化を容認・促進するようなものではない。所得格差問題を是正しようとする議論も多く存在する。著者の示す「経済学」は一部の派閥によるものに過ぎないのである。
こうした客観性を含めて議論が行われていれば、よりバランスの取れた名著になっていただろうに、と悔やまれる。
しかし、この本の魅力はそれでもなお絶大であり、多くの人に読んでもらいたいと思う。
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