月刊誌広告批評がなくなったことを契機に
時評はもうやらないと著者は言っている。
橋本治の時評を楽しみにしていた者としては
寂しいかぎりだと思っていたが・・・・
この小説は、これまでの膨大な量の時評は
小説を書くための下準備だったのではないか!!
と思わされるほど充実し、練りこまれ一気に読ませるものだった。
昭和25年頃生まれた二人の女性が高度経済成長期に青春時代を
過ごし、やがて家庭を築く。高度成長の波に乗って「夢」を
見ている夫婦の間に、昭和40年代後半にそれぞれ娘が誕生。
娘たちは、生まれてからずっと豊かになっていくだけの方向しかない
世の中で育っていくが・・・・彼女たちが社会に出た時には
日本は停滞の時代に突入していた。
大人たちも子供も時代が曲がり角を曲がっていることには気付かないで
これまで通りが続くと思い込んでいるなかで、娘たちの人生が転落していく。
ラストで母親が橋の上から見たものは何だったのか・・・・
取り返しのつかない事態に入ってしまってから母親が見たものは?
絶望の先にしか「あるべき」未来は開けないだろうか?
『巡礼』
巡礼と対になるような作品かもしれません。