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橋
 
 

[単行本]

橋本 治
5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

悲劇は起こる。しかしそれが何故なのかは誰にもわからない。北国で育った二人の少女がそれぞれ堕ちていく二つの渦―。日本海に面した雪深い地方で、高度成長期に青春を過ごした二人の母親、元水商売の正子と信用金庫勤務の直子。彼女たちの娘、雅美とちひろが停滞の次代に家庭を持つ。そして、二人はそれぞれ、静かに人生を転落してゆくのだった。時代と人間の宿命を作家は仮借なく綴る。著者渾身の長篇小説。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

橋本 治
1948(昭和23)年、東京生まれ。東京大学国文科卒業。1977年、『桃尻娘』で小説現代新人賞佳作に選ばれ作家デビュー。小説、古典の現代語訳、評論、エッセイなど多分野で活躍。1996年、『宗教なんかこわくない!』で新潮学芸賞受賞。2002年、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で小林秀雄賞受賞。2005年、『蝶のゆくえ』で柴田錬三郎賞受賞。2008年、『双調 平家物語』で毎日出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 236ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2010/01)
  • ISBN-10: 4163289003
  • ISBN-13: 978-4163289007
  • 発売日: 2010/01
  • 商品の寸法: 19 x 13.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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3つの橋 2010/2/23
形式:単行本
本作は前作「巡礼」同様、この国の時代の変遷を個人に重ね合わせ、その浮沈を個人の人生として淡々と描いた物語である。

タイトル「橋」は、象徴的な場面の舞台装置として使われている。
零細な運送業を営む父と生計を立てるために働きに出る母の元に育った雅美と、事業を興し成功した父と抑制された上昇志向を持つ母の元に育ったちひろ。近くの町に住む二人は、それぞれある場面で「橋」を渡る。置かれた境遇は違うが、どちらも経済成長という地殻上昇によって起こされた「祭り」を「記憶」の中に残しながら橋を渡る。一人は母親に連れられて、もう一人はたった一人で。

二人の両親の人生も描かれる。どちらの人生も、その娘達の人生と何か違った内的な動機があるわけではない。ただ時代というものの中でそれぞれが自分の立ち位置を確保しようともがいているだけである。そして、両親の人生には悲劇は起こらず、娘達の人生に悲劇は起こる。

ラストシーンでは、雅美が起こした事件の現場である「橋」を母親が訪れ、過去を振り返る。

(「巡礼」もそうであったが)全編を通して、個人の生きる意欲であるとか目的意識であるとかは一切書かれない。結果、「個人」の「時代」に対する無力感を浮きだたせることに成功しているといえる。

本作の下敷きになった有名な二つの事件から、小説家の想像力が書き出す時代批評的小説とでも言えようか。

「一人の少女が大人になった。しかしその少女は、自分自身の頼りなさをどのようにも自覚していなかった」

これは冒頭記された言葉であるが、少女は日本という国自身であったのかもしれない。
このレビューは参考になりましたか?
9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
月刊誌広告批評がなくなったことを契機に
時評はもうやらないと著者は言っている。
橋本治の時評を楽しみにしていた者としては
寂しいかぎりだと思っていたが・・・・
この小説は、これまでの膨大な量の時評は
小説を書くための下準備だったのではないか!!
と思わされるほど充実し、練りこまれ一気に読ませるものだった。

昭和25年頃生まれた二人の女性が高度経済成長期に青春時代を
過ごし、やがて家庭を築く。高度成長の波に乗って「夢」を
見ている夫婦の間に、昭和40年代後半にそれぞれ娘が誕生。

娘たちは、生まれてからずっと豊かになっていくだけの方向しかない
世の中で育っていくが・・・・彼女たちが社会に出た時には
日本は停滞の時代に突入していた。

大人たちも子供も時代が曲がり角を曲がっていることには気付かないで
これまで通りが続くと思い込んでいるなかで、娘たちの人生が転落していく。

ラストで母親が橋の上から見たものは何だったのか・・・・
取り返しのつかない事態に入ってしまってから母親が見たものは?

絶望の先にしか「あるべき」未来は開けないだろうか?

『巡礼』巡礼と対になるような作品かもしれません。
このレビューは参考になりましたか?
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
「巡礼」では靴の上から足を掻いてるようなもどかしさを感じたが、「橋」ではこの文体に
慣れたという個人的な事情のせいか、ずっと面白く読んだ。

 有名な2つの事件を題材にしているが、その原因を解明することが目的ではなく、二組の
母娘の人生が淡々と語られる。その流れの果てに事件を置く。
やむにやまれぬ犯行といった事情はなく、流れの行きつく場として、必然のように「事件」
が置かれる。
 
 読み終えた感想は昭和後半のクロニクルとか個人のアルバムを見てるようである。
氏のカメラは人物にズームアップしすぎない、背景(=時代)を背に表情が分かる程度に
写された写真が年代順に貼られたアルバム・・・そんな印象を持った。
 
 氏の評論には繰り返しや念押しの文が多いが、小説に於いてもそれは見受けられる。
それは自分の意図を誤解なく伝えたい、という氏の意志の現れ、と勝手に解釈しているの
だが、これがどうも映像で小説を読むくせのある私には時々目の前をちらつく蝿のように
邪魔に感じる。
反面登場人物の意思は淡々と描写、意志はほとんど持たない風だ。
それは時代に流される人間という存在を表すのに好都合に思える。
だが同時にそこが物足りなさを感じる点でもある。

 時代の描写にも同じ事が言える。
一方の主人公の父親は事務機器のレンタルリース会社を興し成功したものの、バブル崩壊
後経営が傾く。
この2〜30年の「道具」の激変を考えると、例えばワープロ機がタイプに取って代わっ
たが短期間でパソコンに移行した辺りの業界の内部事情なども読んでみたかった。
 
 よく長い予告編のような映画というものがあるが、私には氏の小説はどこか「限りなく
完成に近い下書き」のように感じられるのだ。
あくまで個人の好みの問題だが・・・。
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