勝海舟が西郷隆盛とともに怖れた人物が横井小楠だが、坂本竜馬、由利公正を弟子としていた。その横井小楠というとらえにくい人物をコンパクトに描いたのが、本書になる。
横井小楠は明治新政府の参与となったが、明治二年に暗殺されている。ために、新政府の骨格を作り上げるにとどまっているが、出る杭は打たれるの言葉通り、反感を買っていたのだろう。この暗殺にかかわるエピソードは、あまりの偶然に驚く。
日本人はヒーローを求めたがるが、この横井小楠の生涯を見ると維新の成果は多くの人々が影響し合って成し遂げたものとわかる。坂本竜馬という行動派の後ろに、小楠というシンクタンクがあったということを知っておくと竜馬の動きがより一層理解できるのではと思う。
本書の中で感心したのは、横井小楠がケンペルの『鎖国論』を読んだことで発想を開国に転換したことだろうか。長崎のオランダ通詞である志筑忠雄がこの論文を翻訳しなければ、これを横井小楠が読まなければ、理解できなければ、歴史はどのように変わったかは計り知れない。