この本は、今から30年近く前に書かれたものです。著者のなだいなださんは、慶応大学卒の有名な作家・精神科医です。この本では、最近もはやっている、対話形式で、権威と権力の違いや、それがどこからきて、それに対してどういう立場をとればいいのか、といったことが論じられています。一般に、権力は、人にいうことをきかせるときに使われますが、権威は、いうことをきく側の方が感じる心理だという点が異なっています。では、人はどういうときに、権威を感じるのでしょうか?これは、対等ではない関係において、依存者の心理を持っているものが権威を感じやすい、といわれます。面白いのは、権威的な人間関係が強調されるときには、必ずといってよいほど、親子関係が持ち出されることが多いそうです。例ば、天皇と国民の関係、神と人間との関係、などです。当初は親に権威を感じ、子供はいうことをききますが、やがて一人前になって対等になると、権威を感じなくなります。そうなると、子供は親のいうことをきかなくなります。権威の通用しない対等な人間にいうことをきかせるには、権力に頼る人間関係が生じる、と説明されています。さらに、なぜ子供は権威に従うのか、ということを考えると、そこには自分が知らないことに対する不安がある、ことが分かります。つまり、自分の内部にある漠然とした対象のない不安が、権威に頼る心理を作る、ということです。逆に、権力に服するのは、外側からの力に対する具体的な恐怖感がある点が異なります。