構造改革論者の「財政・金融政策がだめだから構造改革を」という論理は、医師が現代医療(マクロ経済対策)は効果がないからといって加持祈祷をやるようなもの、とまで言い切る。根拠として、経済学者の見地から構造改革論の誤りを具体的に検証する。
まず、構造改革と景気回復には関係性がないと指摘。さらに、構造改革論者がやり玉に挙げる「経済の日本的システムの硬直性」も、長期的な物価下落と失業の拡大という最大の懸案とは無関係であると論じている。
全体として構造改革の賛否を問うのではなく、現政府が力点を置く雇用制度改革などが「的外れ」であるという論理を経済学的に強調している。
不況はあくまでも総供給に対する総需要の不足であり、「マクロ安定化」のためには財政政策、金融政策が基本となることに変わりはない、その実施策を子細に検討することが重要なのだと結論づける。
(日経ビジネス 2002/02/04 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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「構造改革」が叫ばれて久しいですが、たとえば道路公団の民営化(=構造改革)が、なぜ景気回復につながるのか、直感的におかしいと思う人は多いはず。そんな疑問に、マクロ政策(総需要不足に対する対策)とミクロの政策(経済効率の改善)は目的も役割も違うのだから、二つの政策の間に基本的な因果関係はない、と解き明かしてくれます。つまり、道路公団民営化は、個々の経済主体を効率化するミクロ政策であってマクロの総需要を満たすための政策ではなく、それで現実的な景気が回復はしない、ということになります(それどころか景気を悪化させることもある)。
不良債権も日本的雇用システムの崩壊もマクロ政策の失敗の結果(批判の対象は金融政策)、したがってミクロの政策や不良債権処理を進め、日本的雇用システムを壊したところで景気回復にはつながらない、とする論理には説得力があります(ただし、著者も述べているとおり「問題」がマクロ政策の対象とする循環的な景気低迷であることが前提。この点は著者も述べているとおり、循環的と見るか構造的とみるかは論が分かれる。ここを納得したい)。
いろいろな議論を論理で整理、その明快さで一読の価値あります。
不思議なのは、一見難しそうな内容なのにへたな小説よりずっと面白いことである。その秘密は文章力にある。言葉の的確さ、文章展開の無駄の無さに心地よさを感じる。
それにしても著名なエコノミストたちは、彼らの構造改革論は経済学的に誤りであるという指摘に対し何を感じているのだろう。「いや、学問的にも正しいのだ」と答えられないようならば、いつまでも誤った言動で国民を扇動しないで欲しいものだ。
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