誤解のないように書いておくが、私は宮部みゆきの大ファンである。
ミステリーファンの中では「これからの注目作家」と言われていたが
まだ今のように「超メジャー」ではない頃から、作品はすべて読んでいる。
いずれも素晴らしい出来映えだ。うまい。「楽園」も一定の水準は超えている。
だから読んで後悔はない。
しかしここ数年、ややついて行けなくなっている。同じ作家をずっと読んでいると飽きるものだが、そうではない。
宮部の小説は、うまい。独自の世界もある。だがここ数年はかつてのような緊張感がなくなってきたと思うのだ。
まず、無用(と私には思える)に長い。「楽園」も、宮部の文章力でスイスイと読ませられるが、
「うーーむ!」と感心したり、「すごい!」と感嘆したりという場面が少ない。
人に対する優しいまなざし、ラストの落とし方はさすがだなあ、うまいなあ……と思う。
が、そこまでに上下巻700ページ。その700ページが、冗長なのである。
会話にも、これまでの宮部作品のような「味わい」が少ない。
厳しい言い方をすると、橋田壽賀子のシナリオを読んでいるような錯覚さえ覚えたシーンもある。(これは極論)
また「楽園」は「模倣犯」を読んでない人にはストーリーがつかみづらい。
「模倣犯」の9年後の続編――という位置づけだからだ。
いくら「模倣犯」が大ベストセラーになったとはいえ、これはないと思う。
上巻の初めのほうで「模倣犯」のダイジェストを入れるとか、
藤原伊織の遺作「名残り火」のように、はっきりと「てのひらの闇2」と謳う誠実さがあっていいのではないか。
宮部作品が好きだからこそ、彼女には「火車」の頃の輝きを取り戻して欲しい。
単なるノスタルジーではなく、心からそう思う。
よって、★ひとつ減らしました。