「模倣犯」から9年後。「あの事件」の呪縛から逃れようとしている、
フリーライター前畑滋子を描くスピンオフ作品。
いつもタイトルが秀逸な宮部作品だが、「模倣犯」と同じく
「楽園」というタイトルの奥深い意味は最後にわかる。
ここで書くとネタばれになるが、
その部分の宮部氏の文章は、呼んでいて鳥肌がたつほどの迫力だ。
こうした宮部節は作品の随所にいつもある。
人間に対する鋭い洞察力、対象をその瞬間だけ遠くに突き放した結果得る
残酷なほどの人間の持つ現実の姿。
編集者は本の帯に書くキャッチコピーに困らないだろうなといつも思う。
宮部氏の作品の例にもれず、冒頭の数行を読んだだけで虜になってしまった。
とうとう深夜までかかって上下巻読了。
ストーリー展開と人物描写のうまさもさることながら、
陰惨な事件の中でも作者の暖かな目線が読んでいてホッとする。
先日お話した、ひとり息子を亡くした53歳の女性が、
愚直すぎるほどの人生の中で掴み取ったものを最後に昇華させる展開は本当に見事。
人間の持つ、はかりしれない可能性、強さやかしこさは、学歴ではなく、
どう人生を生きてきたかで決まるのだと痛感する。
そして、最後に本当に爽やかなエピソードが残されている。
これはこの作品に、奥行きを与えていると思う。
「模倣犯」を呼んだ人も、読んでいない人も、「楽園」は楽しめると思う。
しかしこの本を読んだら「模倣犯」を読まずにはいられなくなることは確か。
お奨めです。