ブント叛旗派の指導者が中央大学全中闘による学館闘争を軸に60年代後期の全共闘運動の実相を書いた書。中大独立ブントという立場から党派と学生運動の境目に視点をおいているために、これまで知られていないポイントや新鮮な切り口が随所に見られる。ブント再建過程で上京した塩見等が、経験豊富で柔軟な指導力もあったのに、67年の2.2敗北以降は中核派との対立を軸に左翼的方針を呼号する党派至上主義になったことなど、時代の真相を理解する手がかりである。彼の清新な「魔歌」発表論文が、いささか牧歌的な三多摩地区での活動を経て共同体論に結晶し、時代の支持を得ていく風景など、これまでの党派官僚あがりの書いてきた「やったぜ」みたいな闘争論とは趣が大きく異る。おそらく、あの時代を立体的に描写した著としてはぬきんでた文章だと考える。とくに文体が「あの頃」のままで、その点に著者の「変わらない」人格を彷彿とさせられ非常に感銘を受けた。