著者は、帰国後大学教授(静岡大学、和光大学)として教鞭をとっているわけですから、いわゆるインテリゲンチャーです。だからというわけではありませんが、あとがきに「真実を真実として伝えよう」という意思を感じます。文章は、感情的にならず、客観的に押さえられていて、読む側としては、逆に引き込まれてゆきます。些細な出来事も多かったはずですが、それには、言及していません。人とのふれあい、俘虜生活のながれなど、俘虜としての生活が非常にわかりやすく描かれています。会田雄次の「アーロン収容所」と双璧をなす俘虜記といえるでしょう。最後に、民主化運動として俘虜の間に広がった些細な自称に対する「批判と自己批判」「つるしあげ」に遭遇したロシアの老大佐のことばは、今の日本人が読んでも身につまされるのではないでしょうか。いまこそ、大局を見なければいけないと痛感いたしました。