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簡単にこの本の手法を説明します。上流工程の方法論として、処理を最初に考える方法(Process Oriented Approach:POA)と、データを主体に考える方法(Data Oriented Approach:DOA)が一般的です。この本ではDOAを主体としながらも独自の方法論をとっています。
処理を「機能」と「業務」にわけて、業務とデータを同時に分析し、その後機能を分析するのです。新DOAと言えるかも知れません。業務はデータ・フロー・ダイヤグラム(DFD)で整理し、データはER(Entity-Relationship)図で書きます。このDFDもER図も「渡辺式」と言うべき独自の作図法です。DFDは「タイミングを表せない」という欠点をなくし、ER図は「実データ(タプル)を描けない」という欠点を完全に取り除いてあります。最後に機能分析ですが、ここでも驚くべき手法を提案することで、若手でも簡単に機能分析が出来る仕掛けを用意してあります。
大変読みやすい本ですので、実用書と思えるかも知れませんが、バックボーンの理論もしっかりしています。著者はデータモデリングの本を既に2冊書かれた方です。この本がSEのバイブルになることで、不幸せなシステム開発が1つでも減って欲しいと思います。
他のレビューではあまり触れられていないようですが、本書の後半に列挙されている「上流工程で適用できるパターン」の考え方は、特筆に値すると思います。
最近では、「パターン」といえば「デザインパターン」であり、設計以降で利用されるものとしてとらえられていますが、著者は上流工程でのパターンとして、「業務フローのパターン」「データモデルのパターン」「機能モデルのパタ-ン」「サブシステム分割のパターン」の4種を挙げ、抽出を試みています。
若干、一般化が進みすぎているという感はありますが、業務に関して一般的な知識を得ることができ、とても有意義です。
あえて難点を挙げるとすれば、DFD、ERともに著者によるアレンジが加えられていることでしょうか。
アレンジ自体は、著者の優れたアイデアであり、書かれていることはよく理解できます。しかし、実務で使おうとすると、ER描画ツールが対応していないのです。また、他のエンジニアに、記法から説明しなければならないのです。この点は、やむを得ないところですが、読者の側に若干の注意が必要なところになります。
とはいえ、全般に読み応えのある、よい本です。経験則や、現場のやりかたに慣れて、より良い方法を考えるのをやめてしまいがちですが、この本はそうした惰性を断ち切るチカラになるでしょう。多くの人に読んでもらいたいと思います。
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