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楡家の人びと 第1部 (新潮文庫 き 4-57)
 
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楡家の人びと 第1部 (新潮文庫 き 4-57) [文庫]

北 杜夫
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 366ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/07)
  • ISBN-10: 4101131570
  • ISBN-13: 978-4101131573
  • 発売日: 2011/07
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
この小説は楡家という脳病院(精神病院)を経営する一家の大河ホームドラマだ。
とてもシニカルだけどユーモラスな語り口は、まるで親戚のうわさ話を聞いているような感
じがしてくる。

この小説に登場するあまたの人々の中で、私が一番好きなのは末弟の米国(よねくに)さんだ。
彼は今でいう引きこもりだ。
家からでることはないけれど、彼には仕事がある。
彼の仕事は広大な病院の敷地の裏につくった畑の責任者だ。
といっても、農作業は小作人が行い、彼がすることはただ畑の周りを散歩することと、同じく
書生くずれのニートの熊五朗さんとのおしゃべりだけだ。
端から見れば、なんてうらやましい生活!と思うかもしれないが、彼の苦悩はとても深い。
なにしろ彼は不治の病に侵されているからだ。
もちろん自分で勝手にそう思いこんでいるだけだけど。
苦悩に満ちながらも優雅な生活を送る彼が、後に時代の波に飲み込まれていく姿はとても悲しい。

そんな米国さんのような普通の人生がこの小説にはいつくもつまっている。
だからこそ圧倒的な親近感をもって、読むものの胸に響く。
大正時代の高揚感、昭和初期の不安感、戦時中の悲壮感。
それぞれの時代の持つ空気がこれほどリアルに伝わってくるのは、
この小説が普通の人々の物語だからだ。そこには劇的なこともなく、英雄も登場しない。
だからこそ、この小説のおもしろさは
100年たっても古びることはないと思う。
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時は大正時代、ところは東京、南青山に、
西洋の御殿のような帝國脳病院がありました。
院長は山形県出身の楡基一郎、
ただし、それはかれ自身がつけた名前で、
もともとの名前は金沢甚作でした。
かれはドイツに、そしてアメリカに留学した精神科医で、
髭の先をチックで固めて反り返らせたカイゼル髭を生やした小さな男ながら、
いつも明るく、調子良く、見栄っぱりで、威厳があって、
それでいて誰もに愛され、患者たちから感謝されました。
精神科医であるのみならず、
衆議院 立憲政友会の議員でもあって。
妻はひさ、彼女は奥でめだたないながら、
しかし、かいがいしく病院を支えたもの。

物語は、青山に明治三十七年に開業してから十五年め、
そのまえの本郷時代から数えると三十年めから語りはじめられます。
病院には百人の職員、三百人の患者たち。
自慢のラジウム風呂があります。
病院は、楡基一郎が一代で築き上げた社会でした。
いいえ、診療以外のすべてを管理する、院代(院長代理)の秀吉にとって、
「この病院は幻の宮殿であり、基一郎の測りがたい天才がもたらした、
地上の驚異」でした。
毎年開業記念日の十二月十四日には賞与式が挙行され、
すべての従業員はもちろん、出入りの職人まで、
院長からなんらかの賞が与えられます。
患者のなかには新聞記事に節をつけて読むビリケンさんもいてみんなに好かれています。
(ビリケンさん、このあだ名がいかにも時代を表していて、
なぜって、時まさに大日本帝國が朝鮮併合をおこない、
それをなしとげた寺内正毅が総理になって、通天閣のビリケン人形に似た風貌のかれの、
非立憲内閣はビリケン内閣と呼ばれた、そんな時代です。
すなわち大正時代は一方で民主主義の進展した時代でもありますが、
それは民主主義無視の軍閥支配とつねに緊張した競合関係にありました)、

この小説は、大正時代から第二次大戦後まで、
一族三世代を描いてゆきます、
弁士のいる活動写真、コドモの遊び唄、ダンスホール、
時代の風物詩を織り交ぜながら。
どの登場人物も人間味たっぷり、
それどころか誰もが多かれ少なかれ変人っぽさを強調して描かれ、
それでいて著者のまなざしはいかにも優しい。
と同時に、そこには多人数の環境がもたらす自堕落への誘惑もまたいたるところにあって、
基一郎率いる帝國脳病院は、そのきわどいバランスの上で、
まさに繁栄し、前進を続けていました。

しかし、ゆたかで立派な一族は、基一郎の議員落選や、
次女が自由恋愛に走ったことなどを不吉の予兆として、
少しづつ没落へ向かってゆきます。
基一郎の意思を継ぐのは長女龍子、学習院育ちで、まじめで勝気な女です、
その夫、二代目院長の徹吉は、まじめで学級肌、モデルは著者の父、
歌人の斉藤茂吉です。
物語の中盤では、ふたたび繁栄への兆しが見え隠れしながらも、
しかしやがて、おそろしい事故が起こり、さらには第二次世界大戦、
もはや物語はもはやもとには戻らないところまで没落を進め、
一族それぞれのさまざまな哀しみが、戦敗の哀しみと重ね合わせられつつ、
物語はフィナーレを迎えます。

筋書きは悲劇だけれど、物語のタッチは上等のコメディで、
かつまた著者の一族を扱っている小説ながら、けっして私小説とは呼ばれず、
むしろ日本が生んだ近代小説として多くの賞賛を獲得しています。
だって、超おもしろいんだもの。
著者がデビューして四年後、1964年、
三十七歳で書き上げた代表作。
The House of Nire として英訳されています。
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5 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
Amazonが確認した購入
とにかく面白い。たとえ、ブンデンブローク家の人々を読んでいても、それとはまた違う味がある。それは、市民を書いていてそこに気品が漂う作品である。
この単行本の時の読んだが、こんどまた文庫版で読むと昔見逃していた点が見えてきて、面白さが加速する。

楡喜一郎も魅力と、俗物性がいろんなめんで面白さをひきつけている。

戦後でも指折りの小説に入ること請け合い、
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