もともと新聞連載小説だけに、随所に泣き笑いのつぼが設定されており、著者独特の歯切れのいい文体ともあいまってたちまち引き込まれる。脇役の一人ひとりまで丁寧にキャラクター設定された「優しい人」「いい人」たちによるファンタジーは、まさに浅田節の真骨頂だ。おまけに中年の純情恋愛までが織り込まれ、山あり谷ありで読者を飽きさせない。やや意外なラストシーンはほろ苦くも温かい味わいを残す。
美しい女性の肢体をわがものにした主人公の行動のおかしみ、間抜けな死に方をしたやくざのべらんめえ口調の説教節など、著者ならではのディテール描写、懐かしくも美しい日本語の世界などは、本筋をはなれても楽しめる。死をめぐり、家族間、世代間で感想を述べ合うきっかけとしても好適のエンターテイメントといえよう。(松田尚之) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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ただし主人公(たち)は死者の側。この世にやり残したことがある三人の死者が、姿をうつしみの他人に変えて、死者の弔いの場に現れ、正体を曝すことなく思いを遂げてあの世に帰ってゆくという話である。
死そのものやあの世の描写のあっけらかんとした明るさは、浅田ならではの優しさか。そして現世に残した者たちから、生きているうちには知ることのなかった多くの真実(つまり死者への愛)を汲み取ってゆく。期限付きで蘇りを認められた死者たちは、幾ばくかのものを彼らに返し、永遠に不在になることを詫びるためにこの世を再訪したわけである。こう書くと、あくまで楽天。ヒューマン。あくまで情と情とのせめぎ合い。つまり浅田節というやつである。
ここのところ短編よりも長編に元気の見られる浅田次郎。本書は何気なく誰もが自分の突然過ぎる死を想定した場合に考えつくような他愛もないストーリーなのだが、それだからこそ、死への用意をしていない日常がかえってよく見えてくる。不思議な仕掛けだ。
主人公はデパート店課長、昔かたぎのやくざの親分、無垢な子供の三人。いずれも唐突に死を迎え、戻る現世で三つの物語がモ!!!ラー式に絡み合い、それぞれの宿命を承服してゆく七日間。少し思いもよらぬラストに戸惑うけれども、あの世は天国に行く人ばかりという浅田楽観節が三通りの死の苦痛をここでは癒してくれている。しみじみと読み、笑って泣ける初七日の物語である。
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