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話の語り手の視点から描写される鮎村尋深(ひろみ)がとてもいい。酒好きで、歌の好不調の波が激しいプリマドンナの卵。近所の迷惑も気にせずに、学校の練習室で夜中にオペラのアリアを大声で歌う尋深という女性のキャラが、陰翳をもって描写されていたのが印象的でした。
タイトルにある“椿姫”というのは、デュマ・フィスの小説を許にしたイタリアの作曲家ヴェルディの有名なオペラです。大好きなオペラなのですが、本書ではその音楽の内容と雰囲気がうまく描かれているなあと感心しました。表面的にさらっと紹介されているというのとは違い、ヴェルディの“椿姫”という音楽を的確に、そして深く聴き込んだ上で、作者が作品の中で素材を生かしている。そこが見事でした。
また、この作品は絵画ミステリでもあるんですね。フランスの画家マネが描いた“マリー・デュプレシの肖像”という絵の贋作が出てくる。ただ、事件のトリックの核心部分がすっと頭に入ってこなかったのが残念。もっと単純なものであったほうが、作品の印象もさらにUPしたかなと、自分の理解力不足は棚に上げてそんなことも思った次第です。
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