本書は、1975年に原子力に依存しない社会の実現をめざして設立された非営利調査研究機関が、2002年に刊行したブックレットである。自民党政権時代の2002年夏、東京電力が13基の原子力発電所に関する29件ものトラブルを、組織的に隠したりごまかしたりし(予防保全の名目で交換され、証拠隠滅されたものも多い)、損傷を放置したまま8基の原発を運転していたことが、2年前の内部告発文書(保安院は告発者の個人情報を東電に提供していた)をきっかけに明らかになった。また、それに続いて他の電力会社の原発でも同様のトラブル隠しがあったことが公表され、原発のある地元では相次いで計画凍結が議決され、福島第一原発では史上初の実質的運転停止命令が出された(実際には、いまだ実用化できるほど研究が進んでいない日本の原発では、これまでにも数年おきに事故が起こり、労働者の被曝や廃棄物処理の問題も生じていた。高速増殖炉も破綻し、3地域では原発に関する住民投票も実施され、反対派が多数を占めていた)。しかし、保安院も東電も原発の五重の壁(実際には2つは脆く、建屋以外の他の2つも非常に単純化したモデルで、甘い想定内で安全評価をしているにすぎない)などを根拠に、原発の安全性を強弁するばかりである。この背景には、行政と業界と学界のなれ合いと癒着(原子力村)があり、誰がなぜどのように隠蔽や偽装を行い、国がなぜそれを見抜けなかったのか、といった事実がきちんと情報公開され検証されずに(儀礼的に調査会を開いて、実質的な議論をせずに推進の結論を出すなど)、対症療法だけが行われている。本書の以上の指摘を見る限り、2011年の福島第一原発事故は、いつかはどこかで起こり得る事故だったことが明白であり、戦前から続く日本の無責任体制が矯正されない限り、事態は改善しないであろう。