1997年11月。三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券…と、大手証券や銀行が立て続けに破綻した、あの悪夢のような季節の一コマだ。日本人はそして、この時のショックからいまだ立ち直れないでいる。
事ここに至るまでには、回避のための様々な努力がなされていた。例えば三洋証券の場合、経営危機を察知した大蔵省証券局の課長がほかの証券会社や銀行のトップに再建への協力を懇願していて、一時はうまくいくかにも見えた。が、野村証券は総会屋への利益供与事件が発覚してそれどころではなくなり、国際証券は社長の不信感を最後まで払拭することができず、結局、時間切れに終わった。
更に遡れば、第2次橋本龍太郎内閣が発足した直後に消費税増税と2兆円の特別減税の廃止がほぼ同時に決められた展開や、前後して行われた医療費の値上げは、国民一人ひとりの消費マインドを著しく冷やしていた。折しも自民党内での基盤が弱く、政策運営でリーダーシップをとるしかない橋本内閣は政権の目玉である財政構造改革を急いでいたが、ロッキード事件で有罪判決を受けた佐藤孝行を閣僚に起用したことに対する世論の反発が、決定的なダメージになっていく――。
その時々には、むしろ何気なく過ぎ去っていったのであろう小さな齟齬の数々。それらが積もり積もって、やがて当初の志とはまるでかけ離れた方向へと、船を導いた。高度に複雑化・国際化した現代社会では、いわゆる日本的政策決定プロセスは無力であり、場合によっては危険でさえある実態が、よくわかった。
日本経済はなぜ、現状のようなありさまに陥ってしまったのか。バブル経済崩壊後の経済政策において、誰が、何を、どのように誤ったから、こうなったのか。
多くの人々が疑問を抱き、明確な解答を出せない大テーマに本書は敢然と挑戦し、見事に成功している。ベテラン経済記者コンビの取材は精緻をきわめ、細部にこだわった筆致が、尋常でない臨場感をもたらした。
バブルも、ポストバブルも、もっと総括される必要がある。とはいえ、介護保険の現金給付問題や凝りもせずのバラマキ土建政治など、現政権のやっていることもあいかわらずのデタラメ。過去の教訓にいささかも学ぼうとしない"指導者"たちが相手では、つらいものがあるが。
(日経ビジネス2000/1/10号 Copyright日経BP社.All rights reserved.)
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