執筆に集中できる閑静な場所を求め、村はずれの
山荘に引っ越してきた、パルプ作家のティンズリー。
ある夜、山荘が全焼し、焼け跡からティンズリーのものと思しき遺骨が発見された。
さっそく、スローカム検死官のもと、検死審問が行われることと
なり、今回は、うるさがたのイングリスが、陪審長に抜擢される。
大いに張り切るイングリスは、審問記録に注釈を加え、
さらには、独りで火事場の実地検分にまで出かけて……。
堅物で融通がきかないイングリスの視点が加えられる
ことで、
前作よりも、ユーモア色が濃厚になった本作。
特に、注釈というメタフィクショナルな仕掛けは、いささか
悪ノリ気味とも思いますが、やはり笑わされてしまいます。
しかも、そうしたイングリスの頓珍漢な言動が、真相を
隠蔽する煙幕になっているのですから油断できません。
審問自体は、次々に登場する証人たちがそれぞれに放言していくという、
前作同様の展開なのですが、事件と無関係と思われたそうした証言の
中に、大小さまざまな伏線が仕込まれているのです。
実は審問の前に、事件の真相を見抜いていたスローカムが、
終盤になって行う怒涛の伏線回収には感嘆させられました。