本作は第40回江戸川乱歩賞受賞作です。江戸川乱歩賞は推理作家の登竜門として多くの人気作家を輩出しており、受賞作の質も高く文庫で読む際もハズレが少ないので読む機会が多い賞です。乱歩賞の選評では、「検察の問題点を中心とする法曹界の問題点がわかりやすく、興味深く描かれている」(阿刀田高氏)とあり、現役弁護士のデビュー作として評価されています。
それ故読むほうとしては自然と点が辛くなってしまいます。確かに私たちがあまり知らない法曹界の内幕を、物語を通して語っている点は評価できます。しかし内容的に業界暴露話的な部分が下駄を履かせている面も否定できません。
では何が足りないのか?登場人物がやや、ステレオタイプに描かれて人物描写にもう少し深みが欲しいところでした。犯人の動機についても説得力に欠けるし、勧善懲悪的な単純さが司法に携わる人物にそぐわないと感じたのは、弁護士や検事に対する私の幻想なのでしょうか。あまりにも愚か者が多すぎました。
海外に比べ、リーガルミステリーが貧弱なのは、ドラマの起き辛い日本の司法制度にも原因があるのかもしれません。その点でストーリーとしての水準はクリアしているので、今後この分野の発展を期待して作者にはがんばってもらいたいと思いました。