田中森一の前作「反転ー闇社会の守護神と呼ばれて」は、今年出会った書籍の中でも屈指の面白さだった。華やかな表社会と闇の裏社会が必然的に絡み合い、騙しあい、補填しあって歴史は動いているとの事実を認識させつつ、「法曹界の仕事はドブ掃除、ならばそれに相応しく、人間らしく汚くリアルにやる」とのスタンスでことを進める田中の、その剛直かつ情誼な破天荒な生き様にぐっと引き込まれてしまったのだ。今作はその第2作、良くも悪くも現在最も高名なジャーナリストである田原総一朗が問う戦後疑獄事件の闇と真相、そして検察の内情と彼の持つ闇の人脈に、元特捜豪腕検事でヤメ検弁護士であった田中が答える形式、帯には“日本最後のタブー”、“なぜ無実の人間ばかりがあげられるのか?”と煽情的な惹句が並び、これはと期待したのだが、、、。結論から言うと、切り口の違いはあれ、本書で延べられている事の大半は、「反転」や田原の今までの言動、左派、リベラルなジャーナリズム(例えば「噂の真相」)の中で語られてきたことの繰り返しに過ぎない。「反転」を読んだうえで本書を手に取った読者からすれば、さほど真新しくなく刺激的な内容でもないし、佐藤優の各著作がベストセラーとなり、“国策捜査”の内実が白日のもとに晒された今では、もはや、この程度で何がタブーなの?と言いたくもなる。前作の大ベストセラーに安易に便乗しようとする出版業界の悪しき商魂が窺える1冊、“検察はマッチポンプ”、“いままで数多くの疑獄の闇に政治家が介入、圧力をかけて潰された事件は実は一握りであって、つぶれたのは、検察の思惑が働いているに他ならない。それは検察頂点の感覚が時の権力と合致しているから”との言説はなるほど、と感じだが。