法律に準ずる判例を生んで日本を変える力がある裁判所と違い、検察は個々の事件処理が主で、トップの意向が反映される余地は多くないような気もしたが、本書を読んでいると、実力者総長の下では、それなりのカラーが出る布施健、伊藤栄樹、吉永祐介など、特捜上がりの総長の時代は、積極果敢に捜査の腕をふるう。逆に、井本台吉、清原邦一など思想検事から戦後の派閥対立に連なる時代の総長には、派閥の綱引きの話題が多い。最近の総長では、裁判員制度の話題が多い。本書を読んでいると、検事総長や検察もそれなりに時代の鑑となっているんだなと感じる。また、「総長就任までの業績」や「総長時代の検察の業績」には特捜部の関与する話が多い。やはり、検察は特捜を中心に回るものなのだろうか、という印象を持った。
著者は共同通信司法担当などを経て法務省の広報アドバイザーとのことで、検察の代弁者みたいな礼賛記なのかと思いきや、さすがに生存者の批判はないものの、初期の馬場・岸本の派閥抗争や、総長退任から1年後に、ロッキードで小佐野賢治の弁護人になった大沢一郎を「評判が芳しくない」と批判しており、記者の経験を生かした、客観的な視点になっている。直近2,3人は内容が少ないが、まだ、生々しくて書くには憚られたからだろうか…少なくても知るべきことは書かれている。