ほぼ独学で「日本の植物分類学の父」と言われるまでの業績を植物分類学の分野で残した牧野氏。この本は、花を18種、果実を4種取り上げ、牧野氏が「植物のド素人である一般市民向け」に平易な解説を試みたもの。この文庫版で全122ページ、図版も22点。文章の「ボルテージ」の高さは、本書執筆後に牧野氏が世に出した随筆集「植物一日一題」(ちくま学芸文庫版、博品社単行本版等)に比べればまだ「穏やか」な方ですが、それでも「牧野流」のストレートな物の言い様はこの本にもよく現れています。あっという間に読めてしまう楽しい本です。ただ、取り上げた種を見てみると、なんとなく手当たり次第に思いつきで取り上げたような感じが、僅かにではありますが、します。内容も、「初心者向け」ということなのか、深みには多少欠けます。
なお、本文庫版では、仮名遣いは現代仮名遣いに改めてあります。ちなみに底本は、昭和24年出版の「四季の花と果実」で、この文庫版では現在の名に「改題」しています。巻末に、牧野氏の私的な生活面の一端を伺い知ることのできる伊藤洋教授の解説が付されていて、この部分も注目に値します。95歳で天寿をまっとうされた牧野氏。その後、植物学自体も遺伝子上の研究などが脚光を浴びるようになってきていますが、牧野氏の植物分類学における業績は、今後も輝かしく光り続けることでしょう。
植物好きの皆様に気軽にお読みいただける本として、お勧めしたい一冊です。牧野著の随筆「植物一日一題」と合わせてお読みいただくと、氏の気骨溢れる精神や植物に対する思い入れをよりよく知ることができましょう。
以上を総合して、5つ星に近い4つ星としたいと思います。