樺太・朝鮮・台湾・満洲・中華民国 空白の庶民史という副題の通り、植民地時代の古本屋というほとんど今まで顧みてこられなかったジャンルに果敢に取り組んだ労作です。当時の地図を探しだし、古書店について書かれた文章を検証し、当時の書籍業組合員名簿から営業場所を捜し出し、当時の営業の姿を浮かび上がらせるという地道な作業を行っています。
他に類書がないのは、資料が散逸していることもあるのでしょうが、この分野の研究者の少なさも関係しています。筆者の沖田信悦氏は、船橋市で鷹山堂(古書店)を経営されている方ですから、問題意識をもって取り組まれています。
引用されている当時の関連記事も興味深く読みました。往時を知る人も少なくなりつつある現在、古書店の存在を通して、日本人の生活の姿を顧みることができますし、困難な流通過程も知ることができます。庶民史の観点から生き生きとした生活ぶりも伺え、幅広い歴史分野から注目を浴びても良いのでは、と感じた次第です。
章立てを見ても、取り扱われたエリアしか分かりませんが、当時の植民地のほとんどの部分を調べ上げています。その丹念な調査に感服しています。とにかく掲載されている地図を始めとした当時の資料群は貴重でこれからこのジャンルの研究者には大いに寄与する内容だと思いました。