出版社/著者からの内容紹介
美術館や百貨店など身近な場所で何気なく座っていた椅子が、実はミースやル・コルビュジエのデザインによるものだった。なぜその椅子はその空間に置かれたのか。実際に座わることで今まで気づかなかった愉しみを発見するだろう。本書は、背景となる建築・デザイン史の知識を交え、椅子と建築空間の優れた結びつきを紹介する。
内容(「BOOK」データベースより)
背景となる建築・デザイン史の知識を交え、椅子と建築空間の優れた結びつきを紹介する。
内容(「MARC」データベースより)
椅子をさがして建築をめぐった記録であり、「椅子を見つけてそれに座る」という行為から得た愉しみを綴る。2004年11月から2005年10月までホームページ上で連載した「座れる名作京都椅子探訪」に加筆・修正。
著者について
1973年大阪府生まれ。京都工芸繊維大学工芸科学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は近現代建築史。
2002年ウズラボ共同設立。2004年ウズラボ一級建築士事務所に改称。現在、京都芸術デザイン専門学校建築デザイン総合コース助手、京都造形芸術大学非常勤講師。共著書に『図説 建築の歴史』(学芸出版社刊)。
2002年ウズラボ共同設立。2004年ウズラボ一級建築士事務所に改称。現在、京都芸術デザイン専門学校建築デザイン総合コース助手、京都造形芸術大学非常勤講師。共著書に『図説 建築の歴史』(学芸出版社刊)。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
竹内 正明
1973年大阪府生まれ。京都工芸繊維大学工芸科学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は近現代建築史。2002年ウズラボ共同設立。2004年ウスラボ一級建築士事務所に改称。現在、京都芸術デザイン専門学校建築デザイン総合コース助手、京都造形芸術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1973年大阪府生まれ。京都工芸繊維大学工芸科学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は近現代建築史。2002年ウズラボ共同設立。2004年ウスラボ一級建築士事務所に改称。現在、京都芸術デザイン専門学校建築デザイン総合コース助手、京都造形芸術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
抜粋
「京都高島屋の風除室には、ミース・ファン・デル・ローエがデザインしたバルセロナスツールがある」という私のひと言が本書のきっかけとなった。
大学に入学して京都に暮らすようになった私にとって、京都高島屋に立ち寄った際にバルセロナスツールに座る、ということはいつしか習慣となっていた。それくらい、京都にあるミース作品として慣れ親しんでいた椅子なのである。これが思わぬ展開につながった。自分にとって日常的なことが、周りの人にとっては予期せぬ発見となったようだ。椅子に座るという愉しみが、新たな地平へと導いてくれたのである。
本書は、椅子をさがして建築をめぐった記録であり、椅子を見つけてそれに座る、という行為から得た愉しみをつづったものである。
昨今、デザインへの関心が急速に高まっている。おしゃれなカフェや雑貨屋が注目を集め、著名なデザインに触れる機会も増えてきた。高い評価を受けた作品や新しい動向のきっかけになるものなど、ごく身近なところでさまざまなデザインに出会うことができる。この動きに触発されるかのように、「デザイナーズチェア」と呼ばれる椅子に注目が集まった。しかし、「デザイナーズチェア」は椅子単体で紹介されることが多く、置かれた空間や場所と一緒に語られることはほとんどない。そのため、有名作家のデザインである、というブランドだけが重視されているように感じることも多い。それがすごく気になっていた。椅子のよさは、空間に存在するさまざまな要素と相互干渉することで際立ってくるものだ。また、空間の豊かさを決める要素としても、椅子の存在は大きいと私は思っている。
普段の生活のなかで、知らず知らずのうちに著名な椅子や建築を体験している、ということはよくあることだ。ともすれば、無自覚なまま通り過ぎてしまうことも多い。このとき、椅子や建築について少しだけ詳しければ、ひとつの発見につながるだろう。なぜなら、ちょっと見方を変えるだけで、いつもある椅子が特別な椅子であった、ということに気づくからだ。そんな椅子を見つけて、座って、空間とともに愉しんでみてはどうだろうか。この行為を通じて体験した愉しみが、日々の生活に彩りを与えてくれるはずである。
本書では、20世紀以降にデザインされた椅子を取り上げ、それらを「初期モダニズムの椅子」(40年代以前)、「ミッドセンチュリーの椅子」(50~60年代前半)、「ポストモダン以降の椅子」(60年代後半以降)という3つに区分した。この時代区分は、モダニズムが隆盛し、改めて問いなおされ、新しい動きがはじまる、という20世紀に展開されたデザインの動向を意識したものである。
20世紀前半には、モダニズムの思想が積極的に推し進められていくなかで、古典様式に対する批判として装飾の排除が謳われた。このような風潮のなかでデザインされたのが「初期モダニズムの椅子」である。例えば、バウハウスで教鞭を執っていたマルセル・ブロイヤー、近代建築の巨匠と呼ばれたル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエらの活躍によって、鋼管フレームを使用し、工業製品としてデザインされた椅子が生み出されていった。一方で、エリック・G・アスプルンドやフィン・ユールといった北欧のデザイナーたちは、木の風合いを生かした椅子のデザインを洗練させていく。モダニズムが芽生え、開花していくと同時に、地域の伝統と手業が日常として受け継がれていたのである。
50年代以降になると、形骸化しつつあるモダニズムへの素朴な崇拝が、厳しく批判されるようになった。この批判を背景として生み出されたのが「ミッドセンチュリーの椅子」である。「ミッドセンチュリーの椅子」では、北欧の伝統技術を受け継ぎながらも新しい地平を拓いたハンス・J・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンといったデザイナーたちの仕事が目立つ。これに加えて、ハリー・ベルトイアの「ダイヤモンドチェア」のように、アメリカの大量消費社会を背景とした椅子もデザインされた。また、剣持勇に代表されるように、日本人によってデザインされた椅子も高い評価を得るようになった。さらに、木の表情を活かした土着的で力強い魅力を感じさせる、ジョージ・ナカシマの「ナカシマラウンジチェア」のような椅子も現れた。モダニズムへの批判を土壌としながら、新しい素材の開発、地域性や伝統の見直しといった動きが活発化し、デザインの多様化が図られたのである。
70年代に入ると、20世紀を席巻したモダニズムを乗り越えようとする動きがさらに活発化し、新しい視点をもった若い世代の台頭が見られた。これまでの主流であったモダニズムは解体され、ポストモダンと呼ばれる時代に入った。このような時代のうねりのなかでデザインされたのが「ポストモダン以降の椅子」である。「ポストモダン以降の椅子」には、ロバート・ヴェンチューリの「ヴェンチューリ・コレクション」のように歴史様式の引用という手法を用いたものや、ジャンドメニコ・ベロッティの「スパゲッティ」のように細いフレームによるシャープな表現の椅子などがある。これらの椅子では、表層性、軽さ、透明性といった要素が全面的に押し出され、デザインの自由度にとめどない拡がりが見受けられる。
本書では、空間の雰囲気を印象づけるような椅子と、椅子に座るという体験を通じて五感を触発するような場を紹介している。ひとりでも多くの方に、ここで紹介した椅子に座って本書を読んでいただければ、これほど喜ばしいことはない。
大学に入学して京都に暮らすようになった私にとって、京都高島屋に立ち寄った際にバルセロナスツールに座る、ということはいつしか習慣となっていた。それくらい、京都にあるミース作品として慣れ親しんでいた椅子なのである。これが思わぬ展開につながった。自分にとって日常的なことが、周りの人にとっては予期せぬ発見となったようだ。椅子に座るという愉しみが、新たな地平へと導いてくれたのである。
本書は、椅子をさがして建築をめぐった記録であり、椅子を見つけてそれに座る、という行為から得た愉しみをつづったものである。
昨今、デザインへの関心が急速に高まっている。おしゃれなカフェや雑貨屋が注目を集め、著名なデザインに触れる機会も増えてきた。高い評価を受けた作品や新しい動向のきっかけになるものなど、ごく身近なところでさまざまなデザインに出会うことができる。この動きに触発されるかのように、「デザイナーズチェア」と呼ばれる椅子に注目が集まった。しかし、「デザイナーズチェア」は椅子単体で紹介されることが多く、置かれた空間や場所と一緒に語られることはほとんどない。そのため、有名作家のデザインである、というブランドだけが重視されているように感じることも多い。それがすごく気になっていた。椅子のよさは、空間に存在するさまざまな要素と相互干渉することで際立ってくるものだ。また、空間の豊かさを決める要素としても、椅子の存在は大きいと私は思っている。
普段の生活のなかで、知らず知らずのうちに著名な椅子や建築を体験している、ということはよくあることだ。ともすれば、無自覚なまま通り過ぎてしまうことも多い。このとき、椅子や建築について少しだけ詳しければ、ひとつの発見につながるだろう。なぜなら、ちょっと見方を変えるだけで、いつもある椅子が特別な椅子であった、ということに気づくからだ。そんな椅子を見つけて、座って、空間とともに愉しんでみてはどうだろうか。この行為を通じて体験した愉しみが、日々の生活に彩りを与えてくれるはずである。
本書では、20世紀以降にデザインされた椅子を取り上げ、それらを「初期モダニズムの椅子」(40年代以前)、「ミッドセンチュリーの椅子」(50~60年代前半)、「ポストモダン以降の椅子」(60年代後半以降)という3つに区分した。この時代区分は、モダニズムが隆盛し、改めて問いなおされ、新しい動きがはじまる、という20世紀に展開されたデザインの動向を意識したものである。
20世紀前半には、モダニズムの思想が積極的に推し進められていくなかで、古典様式に対する批判として装飾の排除が謳われた。このような風潮のなかでデザインされたのが「初期モダニズムの椅子」である。例えば、バウハウスで教鞭を執っていたマルセル・ブロイヤー、近代建築の巨匠と呼ばれたル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエらの活躍によって、鋼管フレームを使用し、工業製品としてデザインされた椅子が生み出されていった。一方で、エリック・G・アスプルンドやフィン・ユールといった北欧のデザイナーたちは、木の風合いを生かした椅子のデザインを洗練させていく。モダニズムが芽生え、開花していくと同時に、地域の伝統と手業が日常として受け継がれていたのである。
50年代以降になると、形骸化しつつあるモダニズムへの素朴な崇拝が、厳しく批判されるようになった。この批判を背景として生み出されたのが「ミッドセンチュリーの椅子」である。「ミッドセンチュリーの椅子」では、北欧の伝統技術を受け継ぎながらも新しい地平を拓いたハンス・J・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンといったデザイナーたちの仕事が目立つ。これに加えて、ハリー・ベルトイアの「ダイヤモンドチェア」のように、アメリカの大量消費社会を背景とした椅子もデザインされた。また、剣持勇に代表されるように、日本人によってデザインされた椅子も高い評価を得るようになった。さらに、木の表情を活かした土着的で力強い魅力を感じさせる、ジョージ・ナカシマの「ナカシマラウンジチェア」のような椅子も現れた。モダニズムへの批判を土壌としながら、新しい素材の開発、地域性や伝統の見直しといった動きが活発化し、デザインの多様化が図られたのである。
70年代に入ると、20世紀を席巻したモダニズムを乗り越えようとする動きがさらに活発化し、新しい視点をもった若い世代の台頭が見られた。これまでの主流であったモダニズムは解体され、ポストモダンと呼ばれる時代に入った。このような時代のうねりのなかでデザインされたのが「ポストモダン以降の椅子」である。「ポストモダン以降の椅子」には、ロバート・ヴェンチューリの「ヴェンチューリ・コレクション」のように歴史様式の引用という手法を用いたものや、ジャンドメニコ・ベロッティの「スパゲッティ」のように細いフレームによるシャープな表現の椅子などがある。これらの椅子では、表層性、軽さ、透明性といった要素が全面的に押し出され、デザインの自由度にとめどない拡がりが見受けられる。
本書では、空間の雰囲気を印象づけるような椅子と、椅子に座るという体験を通じて五感を触発するような場を紹介している。ひとりでも多くの方に、ここで紹介した椅子に座って本書を読んでいただければ、これほど喜ばしいことはない。