宮本輝の中編・長編小説は、いつも頭の中に鮮やかな映像が浮かんできて登場人物が生き生きと動きます。作者自らが体験した震災を題材にした小説をとうとう手にした時、これをどのように料理したのだろうとワクワクドキドキしました。地震発生直後の政府の対応のまずさは私も実感していましたので、このあたりのくだりを読んだときは、その時の記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡りました。震災により夫の不倫が明らかになり、このまま閉塞感のほうへ突き進むのか、と思いきや、どんどん希望への物語へと発展していきます。惜しむらくは、話の展開を考えると上下二巻ではなく、5~6巻くらいの長編になってもよかったような気がします。進めば進むほど展開が急になっていったのがやや残念。