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棟居の行動は常に犯罪に対する怒りと虚無感に裏打ちされている。私怨の人だ。ともすれば共感の得がたい個人の負の感情が、かろうじて「正義」を保っているのは刑事という身分がそうさせるのではない。彼の支援が深い絶望と、かろうじて彼を支えている気持ち―横渡、その家族、かつて彼が失った妻子への想いが純粋だからであろう。「人間の証明」から受け継がれる情だ。我々は棟居の中に純化された情を見出すことで彼を初めて擁護できる。
つまり正義とは我々の情であり共感であり甚だ心許ないものなのだと思う。
事件が解決したあと、帰路で復讐者・棟居は休日の家族連れを多く目にする。
―日常の幸せは失われた後、初めてそれがどんなに貴重であったかを知る。それが失われた後そのひとかけらでもあればどんなにか救われるか―
あまりにも重すぎる独白、そして凍てつくような孤独があぶりだされた。復讐するものは満たされることはないし、得ることもない「証明」である。
名作の誉れ高い「人間の証明」に比べるとこじんまりとまとまった話だが昨今の奇をてらったミステリー、人前で服を脱ぐのもはばからないような私小説的小説に比して充分読むに値する。
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