鍋島家のおひいさまとして生まれ、皇族に嫁ぎ暮らしている幼年から青年期の日記は
品の良さと教養にあふれている反面、ただの歴史資料という感じで面白みはない。
ところが、中年あたりから、急に人間くさくなる。
敗戦から臣籍降下、財産の剥奪など 一般人でもつらいような出来事が一気に
降りかかってきてからの彼女の日記は、ただのおばちゃんであり、そして
すごく温度を感じさせる。
たとえば財産剥奪で手放さなくてはいけなくなった別荘を次に購入した商人に対して
「主人はまだ34歳の青二才、よくもそんなに金をこしらへたもの。(中略)あんな
いなかもののババーや青二才に此家を勝手につかはれるのかとおもふと くやしくて
くやしくてたまらない」など。
それにしても、歴史資料としても大変貴重なものです。時代背景の説明や、
注釈をして 研究者以外の人が読める読み物とした著者の苦労は大変なものだろう。
日記の原文の写真をみると あまりに流暢な文字すぎて全く読めない。
伊都子の人間くささと著者の労力に☆5つ。