怪我の功名、と言うのはこういう本を言うのだろうか。有名な桶狭間の戦いに関する検証本の一冊。
特に面白いのは織田・今川両氏の国力と戦力を再検証している箇所であろうか。駿遠参三国で65万石はいくらなんでもと言う気がするが、織田領16〜7万石は少なすぎると言う点には納得させられる。また、今川軍2万5千はあくまでも数字上であり、同盟中とは言え武田・北条に備え数千の留守兵力を必要していたはずで、桶狭間に展開したのは「1万人程度」とするなど、従来当たり前とされていた点にも見直しをかけている。
また、典拠となる史料の名前もちゃんと記載しており、私はこう考えている系の空想本とは一線を画してはいる……が、それと公平性はまた別である。
筆者の信長評、「狂気と怜悧を兼ね備える」ぐらいはまだしも「獣性の持ち主」とか「重い精神病」とか「無慈悲・冷酷程度ではその気質を言い表せない」まで来ると内容の是非をさておいて研究本としては評価を下げざるを得ない。信長が嫌いなら嫌いでもかまわないと思うが、「〜の真実」と銘打ちながらこう言う主観むき出しの文章を本文中で書くべきではないだろう。
信長嫌いであるが故に新しい視点から見直しをかけた、と言う意味で評価できるが、信長嫌いが露骨過ぎて評価が下がると言う何とも皮肉な本である。
それでも随所に無視できない点があるため、上記欠点を鑑みて星三つ。文章が冷静なら星四つになっただろう。面白いだけに勿体無い本である。