鉄矢の基本的な性格は職人気質的なところや、名誉や金銭に無頓着であったりす
るところからスキゾイドであることが考えられる。スキゾイドの特徴は色々とあ
るが、対象との関係の距離の取り方に対するアンビヴァレントな思いであったり
、万能的な空想を抱きがちな傾向がある。
鉄矢はさくらの死という抑うつを引き受けることはできず、万能的・魔術的な世
界に退行してしまった。それはさくらの死を否認し、未だ生きているという幻想
の世界である。そして、それはロボットを作るという技術と力をもっている鉄矢
だったからこそでき、それが鉄矢の万能的世界を維持することに貢献することが
できた。
しかし、徐々にその桜2号がロボットにしかすぎず、思い描いたさくらとは違うと
いうことを認識しはじめるようになった。桜2号がいることでさくらの死を体験せ
ずともすんでいた鉄矢にとってはこうした脱錯覚は大変苦痛に満ちたものであった
と思われる。それは3年間直面することを避けてきたことを考えると容易に推測す
ることが出来る。
最終話において、再び鉄矢のモーニングワークは停滞・退却することとなってしま
う。それは桜2号が鉄矢の身代わりになって破壊されたことと、「また会おうね」と
いう桜2号の最後の言葉が引き金となっている。これは鉄矢にとっては再び万能的な
世界に引きこもるには十分すぎるものであった。鉄矢にとっては死んださくらが再び
そこにいたと体験されたことであろう。さらに、ラストシーンでは、今度は鉄矢の父
がさくらの復活を遂げてしまったのである。鉄矢の欲望を鉄矢の父が肩代わりし、実
現させたということもできる。このように、再び万能的世界に引きこもってしまうよ
うになったのは、鉄矢がスキゾイドであったことが大きい。さらに、過酷な超自我ゆ
えに、さくらを助けられなかったという罪悪感の強さに耐えられなかったことも要因
である。