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6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
時と立っている場所と,
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レビュー対象商品: 桃―もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫) (文庫)
文庫化に当たり著者は本書がツ、イ、ラ、クと対であることを明確に示すタイトルにしました。
桃の物語たちをツ、イ、ラ、クを読まないと味わいが激減してしまうのは、確かなことです。 マーケティングでは対であることを示すことは不利といわれているにも関わらず、そう決定した作者にまず拍手。 準子ちゃんが14才で落ちた恋愛事件の周囲の風景、および本人の回想からなる短-中篇の小説です。 長命市にもう一度さまよいたかったのは、読者だけではなかったのですね。 著者もみなの人生を堪能しながら、サイドストーリーを著しました。 ツ、イ、ラ、クの甘い物語を抑える頑なな文体を手放し、豊かな叙情性をたたえた物語たちでした。 しかも読者を裏切るのが、キャラクターのたった主要な脇役を主役に据えるのではなく、そう言えばこんな登場人物も居たっけな人々からあの時代を語らせたのが ウマイ!!!!! 長命市の物語は作者にとっても本当に奇跡のようなストーリーだと思います。 文才があふれるのに泥をすするような日常から、本当に美しい花を人生で咲かせた得がたい時代に著された物なのでしょう。 今まで関わってきて、今はどうしているのだか分からなくなった全ての友人たちの幸せを祈らずには居られない1冊でした。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
やや蛇足感もあるが「ツ、イ、ラ、ク」ファン必読の1冊。,
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レビュー対象商品: 桃―もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫) (文庫)
「ツ、イ、ラ、ク」の主要キャラクターや、その友達など、関係者たちの話が
納められたスピンオフ短編集的な作品集。 表題作「桃」は、森本準子ちゃんが好きな人と抱き合っていた14才の自分を 32才になってから振り返ったお話。官能的なセックスの描写も美しいが、 ひとりの男を14歳で全身で愛していた準子の心情(「ツ、イ、ラ、ク」の中の 14才の準子の恋愛感情らしきものの描写って実はそんなに無かった気がする)も あますところなく描かれていてとても美しい1編。 準子と仲がよかった野球部の男の子の親友が、国語の女の先生を好きだった話も 中学生が美人の先生に憧れる、というだけの話なのだが、大人になった彼が 卒業アルバムを見てそれを思い出す、という構成が秀逸だし、過去の恋を 「幼かったな」とありきたりに振り返るのではなく、そのときの心の痛みや 傷ついた気持ちを大切にしたまま大人になって、今は妻や家族を大事にしている、 という優しい時間の流れ方が好きだ。
5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
「桃」によって「ツ、イ、ラ、ク」はより重層的な物語になる,
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レビュー対象商品: 桃―もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫) (文庫)
“大半の女たちは、過去をどんどん削除してゆく”と姫野カオルコは書く。だとしたら、姫野カオルコは特殊な女である。こんなにも鮮明に少女時代の記憶を呼び覚ますことが出来るのだから。“あのころゆえの、倣岸なる楽観ではなく、後年ゆえの客観”。誰しもが忘れ去ってしまっているのに、実はもっとも人生の中で大事で豊かで切実だった少女の時間を作者はリアルに書き付ける。さらに姫野カオルコは“少年の心”さえもお見通しだ。“少年にとって、だれか特定の異性に思いを寄せているという事実は、一世一代の「恥」”。これを書かれては敵わない。さらなる追い討ち。“十四の女と二十歳の男の、精神年齢は同級生”。もうお手上げである。
作者もあとがきで触れているが、この短編集「桃」は、「ツ、イ、ラ、ク」と対をなしている。あの物語からあの時様々な距離にいた人々が、「ツ、イ、ラ、ク」の物語の断片を、様々な形で語っている。そこには「ツ、イ、ラ、ク」では知りえなかった事実があるし、それぞれの立場からの異なった見方がある。「桃」によって、「ツ、イ、ラ、ク」はより重層的、複眼的、普遍的な物語になっている。作者は「桃」と「ツ、イ、ラ、ク」は対ではあるが別モノであり、独立して読んでほしいと記しているが、やはり「ツ、イ、ラ、ク」を先に読むべきだと僕は思う。 「桃」では、“幼さ、若さ”あるいは“田舎の共同体社会”といった時間・空間の不自由さから引っ張り上げてくれるものとしての「恋愛」ってのが、よりクリアに描かれている。「ツ、イ、ラ、ク」にあった物語性がスッポリ抜けている分、作者のメッセージが表に出過ぎてしまっているきらいもあるが。冒頭の「卒業写真」で、また姫野カオルコに泣かされてしまった僕ではあるのだけれど...
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