吉坊の落語は残念ながら、聞く機会が今までなかったが、亡くなった吉坊の師匠の吉朝や、大師匠の米朝一門の落語は音源や東京での落語会で聞く機会は多い。この一門は大師匠の芸風を受け継いだのか、真っ直ぐで、学問的で、分析的で、かっちりしている。本当に駆け出しのような若手の手になるインタビューだけれども、人間国宝級の大御所が、そうした大看板の一門を将来背負うであろう若手による質問を、ちゃんと受け止め、真摯に答えているのが良くわかり清清しい。談志にしても同じで、日本語が難解だが、率直に答えているのが落語ファンなら良く分かると思う。
私は、宝生閑の追っかけなので、本書を手に取ったのだが、舞台で拝見すると、とても崇高な能楽師の人間国宝が、近所のやさしいおじいさんのような雰囲気なのは、吉坊が子供のような風貌で(というか、若いおばさんみたいな)、いじめたら可哀想というオーラを出しているせいなのかな。
団十郎が白血病を克服し、昔だったら治らない病気が医学の進歩のお陰で治るようになり、今はおまけの人生を生きている、と語り、それが芸のあり方にも作用している(勿論良い方に)というのは、普通ではなかなか聞けない話だと思う。吉坊の人徳か。
さりげなく、深くて、良い話が聞けたな、という読後感。