本書の中で好きな部分は、「落ちこぼれでも社長になれた」という類の発言ほど人を馬鹿にしたものはない、と喝破している部分。逆境をはね返してあるステータスを得るという出世話は人びとの感動と羨望を集めるものだが、馬鹿にしていると言われてみればそのとおりで、そこには(社長に)なれなかった人たちに対する優越意識が存在している。
著者が言いたいのは、小泉改革によって醸成された「楽して儲ける」という社会風潮に対して働くことの意義を取り戻せ、ということなのだろう。この主張には私も賛成である。「ワークフェア」という言葉も本書ではじめて知った。もともと福祉に手厚かったわけでもなく、かといって徹底された市場主義も持ち合わせない社会にあっては、「働くことを福祉する」ことが格差是正には有効だというのはもっともだといえる。
ただし、「ワークフェア」自体には賛否両論があるようで、政策としての有効性もはっきりとした評価は出来ていないようだ。日本政府としても政策として取り上げようという様子が感じられないので、慎重に扱ったほうがよさそうである。