近年、経済学の主流は貧困・格差といった社会構造の問題解決をテーマとしていますが、
本書は経済学専攻の大学生が公共経済学を学ぶ前に、現在の問題を整理する意味で読むと
いいでしょう。問題の分類、概念は経済学一般のスタイルですが、専門用語はほとんど
用いていない(ただし、当該分野を少しでも学べば、何をさしているかはわかります)
ので、専攻としない人が読むこともできますが、若干バックグラウンドがある方がいい
でしょう。分量も多くなく、要点をまとめているので読みやすいかと思います。
貧困・格差は幅広いテーマですが、一般的にはグローバリズムが注目されているようです。
同テーマについては、スティグリッツの一連の著作※が有名で、東南アジア各国他の貧困の
原因を欧米への金融・資本市場への解放と極端な投機資金の流入・放任に求めていますが、
日本のように経済規模の大きい国では、本書のように内国政策に注目した(標準的な)解釈
の方があっているでしょう。
※世界を不幸にしたグローバリズムの正体
人間が幸福になる経済とは何か、他
最近も出版されていますが、いずれもかなり似た内容です。
スティグリッツの主張については、問題の指摘は鋭いものの、是正策の提言が弱い難点に
ありますが、本書は分量が限られている中で、明確な数値での増税を提言するなど、
主張がはっきりしています。ただし、格差是正を目的とした増税の数値目標ですので
財政問題にどの程度寄与するかという面の話ではありません。(それを求めるのは本書の
範囲を超えているでしょう)
本分野について、もう少し体系的に勉強したい場合、「スティグリッツ公共経済学」他が
あります。本書はスティグリッツ色がない、中立的な入門書ですが、分量があり、また
例題はほぼ全て米国の話になります。
あるいは現在の貧困問題だけを読み物により知りたい場合、若干軽い内容になりますが
「ヤバイ経済学」が米国の貧困問題を色々な(傍目には悪ふざけに思える)尺度をにより
分析しています。
「格差社会…」では、貧困の尺度を所得で測ることにすること、またどの統計を使ったか
その統計で判断できる範囲についての説明が各所で出てきますが、「ヤバイ経済学」を
読むと、貧困の尺度自体についても学問的な議論があることを感じられるでしょう。