現代はヴェイユが指摘した1930〜40年代以上に心の「糧」を得ることが難しい時代です。つまりは「根」を失った時代といえるでしょう。
底が見えたとはいえリーマンショックの尾を引き長引く不況。不況によって相次ぐ倒産・解雇切り。労働者は米を買うこともママならず今年も「年越し村」が各地に設置されることが予想されます。こういった状況で労働者が心の余裕(「糧」)を持ち続けるのは難しいでしょう。
さてヴェイユは自身も工場労働者として働いた経緯を持ち、世界大恐慌や第二次大戦後の不況を体験しました。その中で彼女は安易な「真理」に身をゆだねてはならないと説いているのだと思います。それは扇動政治家に賛同したり(本書の中でヒトラーやヒトラーに屈したフランス国民が再三批判されています)、名誉や賞賛のために知識をたたき売りすること(近年の雑学ブームやカルトへの警鐘に聞こえます)といってもいいでしょう。
本作は混迷が続く「現代」だからこそ輝きを増す一冊です。