ヤングジャンプ誌で、1980年代から1990年代初頭に掛けて好評連載されていた伝記漫画の名作が同誌の創刊30周年の記念作品として2009年から2010年に掛けて復活不定期連載された3エピソードをまとめた単行本です。
森田氏が細密な劇画手法から1990年当時の比較的簡素な画風に再転換を図った為、絵に揺らぎが有りますが、内容は相変わらず歴史上埋もれがちな人物にスポットを当てる独特の視点と綿密な取材に基づいています。
特に野村克也さんの著作でもその優秀さが何度も触れられていた元南海ホークス他のプロ野球コーチ(後に高等学校教諭)、高畠導宏さんを扱った作品が最高です。
球界でも1,2を争う知性派、野村監督の野球を本編主人公の高畑コーチやブレイザーコーチの様に真に職人気質で学究的な人材が支えていた事が改めて伺い知れた事と同時に、高畠コーチの人間的な素晴らしさも描かれている感動作です。
天才騎手福永洋一さんのエピソードは子供の頃、氏の騎手生命を絶った重症やその後の壮絶なリハビリの様子が競馬に関係ない一般紙でも頻繁にレポートされて居り、競馬に興味が無い身にも印象的でした。その福永氏を改めて知る事が出来るやはり感動的な佳作です。
最後のマーク・エイブラハムズ編はエイブラハムズ自身が才人では有りますが天才では無いので「栄光なき天才たち」で言うと少々外伝的な内容ですが、唯一ユーモア溢れるエピソードで和みます。
本作の手法は後にテレビ番組等にも広く用いられる様になっただけに我々の情緒に訴えかける物が多く、今後も是非続けて頂きたいと思いました。