本書は,山田風太郎作品中最高のキャラクターである柳生十兵衛三部作(「魔界転生」「柳生十兵衛死す」)の第1部です。
(もちろん単独で読んでもOK)
忍法帖シリーズでありながら忍法よりも剣術が主となる作品ですが,これがべらぼうに面白いのです。
山田風太郎は,史実を上手くアレンジし,自分の小説とすることが非常に上手で,本作においてもベースは史実にあります。
藩政に興味を示さず、その貪欲な性格から金集めに熱中して重税を敷いた会津藩藩主加藤明成と
不仲になった家老堀主水が1639年一族郎党を率いて若松城から立ち去ったことを理由に,一族
共に処刑されたという史実をもとに,処刑された主水らの娘らが,柳生十兵衛の助けをかり復讐を
果たすという,波瀾万丈な物語となっています。
風太郎の描く加藤明成は,その淫虐ぶりが凄まじく,女性読者にはどぎつすぎるかも知れませんが,
命がけの復讐劇も「おれは面白かった」と笑い飛ばす柳生十兵衛の爽やかさによって読後感がとても良くなっています。
そして何よりも山田風太郎の文体が素晴らしい。
忍法帖シリーズの入門編としてもお奨めの作品です。
ただし,忍法対忍法の戦いが読みたい方は,甲賀忍法帖や忍法八犬伝などから入られるといいかも知れません。