本書には折に触れ書き留められた多くのデザイン論が収録されているが、なかでも著者のデザイン観が最も凝集されているのが冒頭の「アノニマス・デザイン」であろう。著者は匿名の職人によって作られたジーパン、野球のボール、ピッケルなどに「その土地土地の生活の用に準じて、忠実に素直に作られている健康で平穏な美しさ」を見出してそれを「濁流渦巻く現代文化への清涼剤」として位置付けている。この部分だけを読んでいても拍子抜けしてしまいそうだが、しかしこの視点は伝統的な「用即美」の境地とほぼ同一のものといってよく、シンプルにして質実剛健なデザインこそ著者の希求するものであったことを他の多くのデザイン論や雑感からも読み取ることは難しくない。
言うまでもなく、このような「アノニマス・デザイン」へのまなざしは民藝運動を展開した美学者である著者の実父・宗悦の大きな影響下に形成されたものであり、本書の後半にも、宗悦が創設した日本民藝館の館長を務める立場となった今、あらためて実感されるその業績の偉大さを回顧する断章が挿入されている。親子2代にわたって受け継がれた民藝運動の理念を「蛙の子は蛙」と言って済ますのは安直に過ぎるというほかない。(暮沢剛巳)
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12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
本質をつかんでいくプロセス,
By ユーイチロー (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 柳宗理 エッセイ (単行本)
柳宗理のデザインに惹かれるのはそこに本質を感じるからなのだと思う。 本質をつかんでいくプロセスが「デザイン」なのかも。。ということは柳のプロトタイプ制作に始まるデザインプロセスに見て取れる。 本質をつかむにはその膨大なインプットを必要とするしそのための好奇心も必要。なによりもそれを続けることのできる柳はまさに本質を追究し続ける人なのだと感じる。 日本の民芸館を旅するごとに訪れてみるが、いつもそこで出会うのは国籍に囚われない視点と無駄のない美しさと暖かみを感じながらも厳しい静寂のある風景。そこには生と死の両極端とその間にある緊張感が見て取れる。 本質を追究する人は哲学者でもある。つねに問いを立てるから探求心がつきない。そんな気持ちの状態で活きているから、それは当然文章(エッセイ)になって現れる。 そんな「デザイン」活動の一片に触れることができてとても嬉しく思いました。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
普遍のデザイン論,
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レビュー対象商品: 柳宗理 エッセイ (単行本)
柳宗理が、今までに書いたエッセイの集大成と言える本です。「マーケット・リサーチなどは、デザインの創作には、役立たない。なぜならマーケット・リサーチは、過去のデータの分析だからである。それに反してデザインの本来の使命は、過去に未だかつてない優れたものを生み出すことにあるからである。」という1983年に書かれたデザイン論などは未だに古びていない確かなものです。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
物を作るのが好きな人に幅広くお勧めします。,
By K - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 柳宗理 エッセイ (単行本)
日本を代表するデザイナーの1人、柳宗理。氏の物作りに対する姿勢が、読みやすい文章で語られています。 人・国・文化・その時代に対する愛情が感じられ、 明確に好き・嫌いを発言されているのも、読んでいて好感がもてました。 身の回りにある製品を見て「良いものとは?」と、考えさせられます。 デザイナーといわず、物を作るのが好きな人に幅広くお勧めします。
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