「聖なる狂気」のDVDを出すんならなぜ一緒に同じ監督の「柔らかい殻」も出してくれないんだよ??と嘆いた日々から何ヶ月か?ようやくのDVD化である。「LOTR」の影響偉大なり。
しかし驚くべきことに、単なるヴィゴ・ファンという目で見るなら、この辺の作品群では彼の演技は素晴らしいと思われても、映画自体はちょっとねと思うファンも多いらしい。「柔らかい殻(原題は「反射する皮膚」、理由は1枚の写真に)」も、ちょっとシュールでワケわからん世界が展開するただの暗い映画という印象を抱きがちなのだが、ここで描かれる子供がまた、とことん愛らしくないので(そういう意味じゃ本当にある種子供らしいんだが)、そう思うのも無理のない話。理解はできても好きじゃないと思うのはあり得るかもしれない。とはいえ、わかる人にはよくわかる感覚だろうし、ひねくれたガキだったオレはかなり好きだったんだけどね。
子供時代の得体の知れない恐怖、剥き出しの好奇心や開けっ広げな悪意、何だかすべてが歪んだパースで描かれたような悪夢世界の中で、主人公の兄(=ヴィゴ)だけが美しいまともな人間として描かれている。ただし、心の一部をどこか別の場所に置き忘れ、決して主人公を昔と同じ愛を持って見つめてはくれない、傷ついてしまった人間として。その背後には、遥か遠い外界の脅威としての戦争の影もある。すべての風景が一度見たら忘れられないほどに美しい。主人公がこれから抱えて生きていくものを思うなら、「父、帰る」くらいの衝撃を受けたってかまわないのだ。
というわけで、今回の発売については単純に喜んでいるのだ(何しろ、今のところ英でも米でもビデオしか発売されていないのだから)。で、そのヘンテコな作家であり画家でもある監督フィリップ・リドリーはこの2本の映画の脚本集をヴィゴに捧げてるのだが、実は、コレってイギリス人の監督が想像(妄想?)した架空のアメリカの夢(というか悪夢?)世界だったのである。だから映像世界も夢のような寓話のようなはっきりしない非現実世界になってるわけで、かなりがんばって人工的に作り上げた色であり、風景なのだ。しかし、ヴィゴのことを「初めて会ったときから生涯ずっと知ってたかのような絆を感じた、一緒に仕事をした中でも本当に自分の同類だと思える数少ない1人」とまで脚本集に収録されたインタビュー(少しだけこの監督の生きてきた道が見えるようで興味深い、でも本当に少しだけ、っていうかヤバイよこの人・・・って思われてるのは映画監督たるもの皆同じか?それにしても自分の欲望に正直すぎるよ!)で語っているのだった。こちらも合わせて読むと興味深いです。