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枯葉の中の青い炎
 
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枯葉の中の青い炎 [単行本]

辻原 登
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)

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第31回(2005年) 川端康成文学賞受賞

内容(「BOOK」データベースより)

300勝達成を目前に苦闘する老いたスタルヒン投手に悲願を叶えさせるため、ひとたび間違えば大きな災いが襲うことを承知で密かに南洋の呪術を使う男の話「枯葉の中の青い炎」。1カ月だけ愛人と同棲したい、という夫の望みを聞き入れてやる妻が妖しい「ちょっと歪んだわたしのブローチ」。奇妙な匂いに誘われて、妻の妹をレイプしてしまった男のモノローグ「水いらず」。野球に天才的な能力を持ちながら不幸な人生をおくった同級生を、深い哀切の思いを込めて追想する「野球王」など、全6篇。

登録情報

  • 単行本: 205ページ
  • 出版社: 新潮社 (2005/1/26)
  • ISBN-10: 4104563021
  • ISBN-13: 978-4104563029
  • 発売日: 2005/1/26
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 139,429位 (本のベストセラーを見る)
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15 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 幽玄の世界に心地よく惑うことのできる短編集。(川端康成文学賞受賞作), 2005/6/29
By 
yukkiebeer - レビューをすべて見る
(殿堂入りNo1レビュアー)    (トップ50レビュアー)   
レビュー対象商品: 枯葉の中の青い炎 (単行本)
 芥川賞受賞歴のあるベテラン作家による6つの短編集。
 精緻な現実界を歩んでいるかと思っていると、やがて知らず知らずのうちに幻想の世界へと読者を迷いこませるほんの些細なほころびが物語の中に巧みに仕組まれています。

 例えば、昭和54年1月に大阪で起きた三菱銀行立てこもり事件をベースに紡がれた「日付のある物語」。あの凄惨な事件はテレビで全国中継され、当時中学生だった私の記憶にも強く刻まれたものです。
 辻原登はこの事件の犠牲者の氏名や肩書き、被害状況について、あたかもルポルタージュであるかのような筆遣いで読者の前に詳細に差し出します。そうしながら、この事件を銀行の地階にたまたま居合わせた左翼活動家のその後の人生という仮想のお話にすりかえていくのです。

 「野球王」では作家ナバコフやエレベーターの自動停止装置を開発した発明家オーティスの履歴について詳述しながら、やがて物語の中核を「私」の同級生であった野球部の少年の苦く悲しいお話へと移し替えていきます。

 「枯葉の中の青い炎」に至っては、天皇陛下が太平洋諸国歴訪の旅を中止したことを報じる2003年の新聞記事を冒頭に掲げた後、スタルヒン投手の300勝目の試合へと一気に時代を遡り、そこに作者はやはり魔法のような物語を紡ぎあげていきます。

 揺るがし難いかのように堅固なこの現実の世界と、人間の賢(さか)しらな理と智を寄せつけない幻の世界。その二つの間には明確な境界線が引かれていないことを、これら小説群は鮮やかな筆致で私たちに語りかけているのです。

 「物理世界と精神世界を密かに結ぶシンクロニシティは、日常世界にいくらでも起きていることではないか」(205頁)

 私はそこに、雨月物語のような幽玄の世界を見出し、心地良い目まいを味わいました。

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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 アクロバティック!, 2006/12/4
レビュー対象商品: 枯葉の中の青い炎 (単行本)
川端康成文学賞受賞の表題作がこの短篇集の中で最も注目されている

一篇ですが、僕は『野球王』という作品に衝撃を受けました。

ナボコフの家にエレベーターがあったという話から、かつての友人で

ある「野球王」の話へとアクロバティックに展開していくトリッキー

で斬新な一篇です。あまりに面白くてあっという間に読み終えてしまい

ました。

記憶よ、語れ!

『野球王』の中で繰り返されるその言葉が、記憶と共に様々なイメージ

を呼び起こしてくれます。

この短篇集が僕の2006年ベストワンです。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 美しく編まれた6編の短編集, 2009/7/20
By 
スイート・サイエンス - レビューをすべて見る
(VINEメンバー)    (トップ1000レビュアー)   
レビュー対象商品: 枯葉の中の青い炎 (単行本)
本書には表題作の「枯葉の中の青い炎」を含め6編の短篇が収められているが、何れも日常から少し浮遊した世界が繊細かつ丹念に描かれ、ホラーの要素も少し含まれている。

どの作品も魅力的だが、一番好きな作品は表題作の「枯葉の中の青い炎」。正体不明の語り手により、戦前のプロ野球の大投手「スタルヒン」が三百勝を成し遂げる試合の様子が語られるが、戦前の大投手の大記録と南の島の呪術とが融合するこの不思議な物語は、真実とフィクションの境界性が曖昧で、読者を不思議な世界に引きずりこむ力がある。

真実とフィクションの境界線が曖昧という点は、「日付のある物語」を始めとする他の作品にも多かれ少なかれ共通するところがあり、読者を現実の世界から想像の世界に誘う効果を有しているようだ。

肩の力を少し抜いて、作者が織り成す非日常的な世界へと身を任せるのが、本書への良い接し方のようだ。
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