ストーリーも、人物描写も、結末も一級品です。中でも本作の主人公、竜崎伸也
のキャラは個人的に好きですねぇ。前作では竜崎の真意が分からず探りながら読ん
でいたのですが、本作では出世を諦めて開き直っているせいか、彼の言葉通りの
発言を心置きなく堪能する事ができました。
警察官僚を描く際、常に責任回避を第一に考え、上の顔色ばかり気にする
ステレオタイプが多く見受けられます。しかし竜崎は優秀です。自分が正しいと
思う事にまったく妥協しません。しかし自分が間違っていた事に気がつくと柔軟に
修正も行います。自分に厳しい分、他人にも厳しいので何かと角の立つ発言が多い
のですが、これがいちいち正論で自らも日々実践しているので、言われた方は反論
できません。
竜崎のような人間が警察官僚であれば、喜んで税金を払う気になります。しかし
実際は居たとしても、権力闘争に負けて地方に飛ばされたり、出る杭として疎んじ
られ孤立してしまうのでしょうね。
作者の今野敏氏は、最近前作の『隠蔽捜査』で知ったのですが、ベテランでもう
120冊以上の著作があり、各ジャンルでコアなファンがいるようです。その割には
メディアのウケというか露出が少ないように思います。
いろんな理由があるのでしょうが、もっと注目されていい作家だと思います。
本作も限りなく☆×6に近い☆×5です。