◆「いちばん奥の個室」
姪とともに、三人組ユニット《ダイナモ・
エックス》のコンサートに行った真紅郎。
そのコンサートでは、歌以外に、人間消失マジックも行われた。
コンサートが終わり、トイレに行った姪を待っていると、彼女の悲鳴が。
慌てて現場に駆けつけた真紅郎が目にしたのは、マジックで消えた
女性が、個室のなかで殴られて昏倒した姿だった……。
真相はある意味反則ですが、状況設定の勝利でしょう。
◆「ひいらぎ駅の怪事件」
暴風雨の夜、駅のホームにいた真紅郎は、外国
人女性が、階段から転落した事故に遭遇する。
現場が騒然となるなか、しばらくすると、ホームに
いた若い女性が、カメラがなくなったと訴え……。
駅の構造やそこに至るまでの経路、そして、天候がポイントとなります。
天候にまつわる小道具の手がかりとしての扱いが秀逸なのもさることながら、
ダジャレめいたこじつけで最後に事件の元凶を指弾する真紅郎が微笑ましい。
◆「陽炎のように」
真紅郎の友人の妻が、脳死判定に伴う臓器移植のドナーとなった。
彼女の葬儀に出席した真紅郎は、棺の中から「何か白いもの」
が流れてきたことをきっかけに、猟奇殺人犯「手切り魔」の事件
と彼女の死の関連について思いを巡らせていく……。
手切り魔、臓器移植をキーワードに、次々構築される
仮説、そして、一連の怪異のタネ明かしが面白いです。
◆「過去から来た暗号」
偶然、幼なじみと再会した真紅郎は、小学校時代、自作した
暗号で年賀状を書き、その幼なじみに出していたことを聞く。
しかし、真紅郎は、暗号自体覚えていない。
その後、幼なじみから、くだんの年賀状が送られて来たことを受け、
真紅郎は、まったく白紙の状態で、暗号解読を試みてゆくのだが……。
他愛ない言葉遊びと思いきや、後半、思いがけず重たい展開に。
「名探偵」にとっては皮肉な結末ですが、結果オーライでしょうw
◆「雪とボウガンのパズル」
この冬初の積雪となった朝、大学生が多く住む下宿の裏庭で、
下宿生の一人が、胸をボウガンの矢に突き刺されて死んでいた。
彼は、二階にある自室から庭に落とされたらしく、周囲に発見者以外の足跡はない。
しかも、二階の彼の部屋は、内側から施錠され、犯人の姿はどこにも見当たらなかった……。
真相は、人を喰ったシロモノですが、そこに至るまでに提示されるいくつかの仮説で
余詰めを潰し、読者にその真相を受け容れさせる、作者の周到な技巧が冴えてます。