だいぶ前にレンタルビデオで見て以来、久しぶりに見た。……素晴らしい。
モノクロを逆手にとったような、日本海のロケ映像が絶品。
2009年11月、清張生誕100年を記念してリメイクされたとかいう「新作」とは、
演出の練度も配役の質も画面の奥行きも全くちがう。こちらが、本家ホンモノ。
「張込み」の初コンビ以来、その後の「砂の器」まで、文字通り傑作群に事欠かない
監督・野村芳太郎、脚本・橋本忍(+山田洋次!)、撮影・川又昂というチームの、
最高の仕事だろう。
「新作」の公開に合わせてのDVDBOOK発売となったわけだが、
シリーズの第1回配本「砂の器」同様、全体に格調高い仕上がりで、
映画作製時期をイメージさせる解説・写真、原作との違いなど、充実した編集。
第1回配本で登場した川又昂の代わりに、有馬稲子のインタビューもある。
この映画は、新婚早々夫を亡くした久我美子と、金沢の耐火煉瓦会社社長夫人役の
高千穂ひづるがクローズアップされがちだが、本書掲載の公開当時のポスターでは、
薄幸の女・有馬稲子の顔がアップで、扱いがいちばん大きい!
三女優の順番も有馬・久我・高千穂。これは、新鮮な驚き。
こうした画像や、有馬自身の自負を籠めたインタビューなど、レンタルDVDには
ない魅力が満載だが、今回やや寂しいのは、川本三郎氏のエッセイ。
第1回配本「砂の器」では委曲を尽くしていたが、今回は、やや弱い。
「過去」の地名が犯罪の鍵になるという意味で「砂の器」との類似点(「砂」で亀嵩、
「ゼロ」で立川)を指摘している点はよいのだが、ややくどい。もったいない。
川本さんなら、もっと、昭和30年代の時代相や、日本映画黄金期の俳優たち
(特に今回、渋い男優脇役が大勢出ている)を踏まえた、突っ込んだ言及ができるはず!
なお、付録的に公開当時の予告編が併載。これが興味深い。
本編中では使われていない別カット(もしくは予告編用の映像)がいくつもあるし、
本編では絶対あり得ない三女優全員がからむ(スチール録り用?)「動画」も、
1シーンだけある。
おまけに、清張自身も(例の決めのポーズで)登場してます。