以前、小田和正がTBS「クリスマスの約束」で「恋」を演奏しているのをみて松山千春の楽曲に出会い、以来このうたの深みにはまってゆきました。松山氏の澄んだトーンが残す余韻にヒロインの行間をみるようで、とても哀しいけれどきれいな情景が浮かんでくるんですよね。だから胸いっぱいのうたごころを重ね合わせられ、何度も何度もきいたり、うたったりしてきました。
そんなシンプルなうたは松山千春楽曲の魅力だと思います。「君のために作った歌」「足寄より」「おやすみ」「こんな夜は」「生きがい」・・ささやかさの中にいきることばたちが、強く優しくしみました。そして実は特別感情をこめるわけじゃなくその澄んだ音色の先に叙情をそっと浮かべる声表現だからこその、ことばの素朴な美しさ、リアルさがあります。また文節や語尾をそっとのばし、きれいに引くときの歌い方には、まるで筆の引き方の美しさをみるようです。その余韻にちょっと懐かしい日本のこころ、風景がみえてきそうだからです。
ところで松山氏のうたには、北の大地のような懐の広さだけでなく、北国ならではの寂しい影がさしたり、だからこその温かみがほのかにうまれていたりします。それがわたしはたまらなく好きです。わたしは新潟にうまれて、その凍てつく風に耳を焼きながら寒い冬を越えてきました。だから、刺すような寒さを背景に生まれた彼のうたに宿る、影や風のような厳しさ、そしてその先に見える希望の温もりと強さが、とてもこころに訴えかけるのです。でも、松山氏のうたの素晴らしいところは別に寒い土地の人間だけじゃなく、彼のうたにこころがあって、そこに人の生活の息吹やふるさとがみえるから、普遍的でどんな土地の人へもふるさとのように響いてゆくんだろうなあと思い、今作の感動に至りました。