本には「読む」ことを前提とすると、二通りの使い道があると思う。
ひとつは、趣味的読書である。楽しみで読む、娯楽として読む使い道である。したがって、本は当然「読み物」の扱いとなる。
もうひとつは、研究的読書である。仕事で読む、学術として読む使い道である。したがって、本は「文献・資料」の扱いを受ける。
本書古川薫『松下村塾』は非常な良書で、二つの使い道に適うつくりになっている。こういう本にはなかなかめぐり合わない。「適うつくり」というより古川が、このつくりを意識して本作りを進めたと思えるほどである。「流石、直木賞作家!」といったところであろうか。
松陰の松下村塾について詳細な説明を施しているところが「研究的」だが、明治期に故人となったはずの塾生たちの対談などは「趣味的」である。しかし、「研究的」であろうが「趣味的」であろうが、全体を通して平易な文体で的確で丁寧に説明をしているところなどは古川薫の手腕の高さを伺えるところである。
この良書は選書であればこそ楽しく読める。新書ほど軽すぎずハードカバーの単行本ほど気負うことなく読み進められる一冊である。ぜひ、紐解いて、気楽にしかしじっくりと臨んでいただきたい。